新国立競技場の公募にエントリーしている伊東豊雄氏の建築作品の紹介記事です。(公開された2つのデザイン案のポイントはこちらの記事)
9月17日、建築家の伊東豊雄氏が竹中工務店、清水建設、大林組の三社と組んで新国立競技場公募に参加するというニュースがありました。
世界的建築家・伊東豊雄氏、旧コンペに続き「新国立」コンペ参加へ : 社会 : スポーツ報知
天才建築家は竹中・清水・大林連合と新国立頂上対決へ
伊東豊雄氏は建築のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した世界的建築家ですし、竹中工務店、清水建設、大林組はいずれもスーパーゼネコンと呼ばれる日本を代表するゼネコンです。
有力と目される隅氏チームにとってもかなりの強敵なのではないでしょうか。
出典:http://www.fashion-press.net/news/gallery/7060/124287
最近注目を浴びている下諏訪出身の建築家です。今治市にはご自身のミュージアムがあります。
公式サイト
新国立への思いも度々メディアで語っています。
新国立の新本命とも思われます伊東豊雄氏の建築を年代順にふり返ってみました。いずれも天才的センスが光る革命的作品です。
中本町の家(White U)(1976年)
出典:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/1970-/1970-p_04/1970-p_04_j.html
1970年代にこうした建築表現に到達しています。ある意味はじめから完成された建築家であるような気がします。写真は多木浩二氏のクレジットがあります。偉大な思想家である多木浩二氏も当初から注目していました。
出典:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/1970-/1970-p_04/1970-p_04_j.html
内部は現代建築空間の中でも比類なき美しさと思われます。
作品紹介ページ
シルバーハット(1984年)
初期の代表作のシルバーハットです。現在は今治市伊東豊雄建築ミュージアムに移築されています。
伊東豊雄氏によるシルバーハットの説明です。
伊東 豊雄 - 建築の仮設性「自邸「シルパーハット」にまつわるドラマ」:東西アスファルト事業協同組合
の作品説明です。
東京遊牧少女の包(パオ)(1984年)
出典:toyo ito
シルバーハットと同時期に現在につながる重要な作品をつくっています。現在はありません。担当者はSANAAの妹島和代氏です。
消費社会に暮らし、物だけでなく生活空間まで消費する若い女性ら都市の「遊牧民」(ノマド)をテーマに、「東京遊牧少女の包(パオ)」といったプロジェクトを発表するなど、体を柔らかい膜のように包む建築などを構想し、都市を批評する活動を行った
ここで提示された内容は2000年代からのノマド、ネットカフェ、シェアハウス、ゲストハウス、ミニマリズムを特徴ずける空間のプロトタイプと考えています。こうした空間は今後、進展する格差社会と融合しながら、包(パオ)のような新たな空間をつぎつぎと生みだしていくだろうと予測しています。
風の塔(1986年)
横浜駅西口にある地下換気塔です。建築デザイン界ではポストモダニズム建築のこてこての作風が吹き荒れる中、ひとり爽やかな建築作品を実現していました。
2013年にこの風の塔にプロジェクト・マッピングしたニュースがありました。
神奈川県・横浜市で伊東豊雄設計の「風の塔」にプロジェクションマッピング - エキサイトニュース
南青山Fビル(1991年)
南青山を歩いていますと、なんときれいなビルなんでしょうと思う建築がありました。それが南青山Fビルです。オフィスビルというのは堅い建物だと思っていましたのでこの建築の軽さや透明感にびっくりしたわけです。
八代市立博物館・未来の森ミュージアム(1991年)
博物館です。伊東氏は公共建築も設計するようになります。ランドスケープと融合した軽やかな建築です。伊東氏がそのプレゼンスを決定づけたような作品です。とび抜けた造形力です。
公式ページ
八代市立博物館 未来の森ミュージアム|YATSUSHIRO MUNICIPAL MUSEUM
作品紹介ページ
下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館(1993年)
出典:http://shimosuwaonsen.jp/item/763/
下諏訪には「万治の石仏」を見に定期的に行っていますが、最近、観光客が増えているような感じです。諏訪大社の御柱祭は現代日本が失った原初的形態が残っています。
諏訪湖博物館は下諏訪と上諏訪の中間のやや下諏訪寄りにあります。下諏訪には造形的に独特のものがあって、オリジナリティ溢れる独創的な建築は伊東氏が下諏訪で育ったということで納得できるものがあります。
公式ページ
伊東氏による諏訪湖の思い出です。
伊東 豊雄 - 近作を語る「記憶がつくりだすかたち」:東西アスファルト事業協同組合
伊東氏がNHKの「ようこそ先輩」に出演した時の紹介記事です。
番組では「みんなの家」をつくろうということで子ども達とワークショップをしています。 伊東建築塾では子ども塾も活発に主催しています。
作品紹介ページ
大社文化プレイス(1999年)
宍道湖のほとりに建つ文化施設です。宍道湖のランドスケープと一体化しています。
公式ページ
作品紹介ページ
せんだいメディアテーク(2000年)
日本を代表する現代建築をひとつ選べと言われたら、この仙台メディアテークを選ぶと思います。二重のガラススクリーンによる建築がどれだけの奥行き感を持つかは実際に見てみないと分らないと思います。建築愛好家必見の作品です。
公式ページ
作品紹介ページ
まつもと市民芸術館(2004年)
大小ホールを持つパフォーミング・アーツの施設です。
外壁に象嵌細工のように嵌めこまれたガラスが印象的です。
公式ページ
作品紹介ページ
TOD’S表参道ビル(2004年)
表参道にあるTOD’Sの店舗です。けやきを抽象化したような構造と一体になった外壁デザインです。
コンクリートの構造とガラスが完全なフラットで納まっています。
伊東氏によるこのビルの説明です。
伊東豊雄 - もののもつ力「TOD'S 表参道ビル」:私の建築手法
作品紹介ページ
瞑想の森 市営斎場(2006年)
メモリアル施設です。神秘的です。
多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)(2007年)
多摩美の図書館です。最近では蔦屋図書館が話題ですがその対極にあるかのようなミニマリスティックな図書館です。
外観です。ここでも構造と一体になった新たな建築表現をつくりだしています。
学外者でも見学できるということです。
八王子図書館の見学|学外の方の利用|利用案内|多摩美術大学図書館
作品紹介ページ
座・高円寺(2008年)
座・高円寺です。わりと「日本らしさ」を意識した作品なのではないでしょうか。
新国立では木材を使った日本らしさが課題として求められています。これまでのところ木材を使った作品はあまりでてきていません。課題的には不利なような感じもします。
作品紹介ページ
高雄ワールドゲームズメインスタジアム(2009年)
台湾のワールドスタジアムです。収容人員は40000人、最大で55000人まで収容できるようです。
いくつものパイプが屋根を支える構造体でスパイラルな連続体となっているようです。
スタジアム側のビューです。「スタジアムの屋根には太陽光発電システムソーラーパネル(約6,500枚)が設置されており、21世紀の環境配慮型のスタジアムとして、高雄市が世界に発信する新たなシンボル」であるそうです。
こうした実績があるのが伊東氏の強みでもあります。
作品紹介ページ
トーレス・ポルタ・フィラ(2010年)
バルセロナにある施設です。赤いホテル棟と黒いオフィス棟からなります。
外壁が赤いパイプで構成されています。
作品紹介ページ
今治市伊東豊雄建築ミュージアム(2011年)
伊東豊雄ミュージアムです。独特のフォルムですが景観にマッチしています。
公式ページ
作品紹介ページ
台中国家歌劇院(2014年)
台湾に出来たオペラハウスのようです。
Taichung Metropolitan Opera House - Wikipedia, the free encyclopedia
みんなの森 ぎふメディアコスモス(2015年)
最新作です。こんな空間はみたことがありません。しかも木材を見たことのない方法で使っています。1984年の東京遊牧少女の包を何となく思いだしてしまいますが、時代意識を完全に捉えています。新国立競技場での提案が期待されます。
この建築についての記事です。
公式ページ
人間としての建築家
プリッカー賞受賞時のインタビューから一部引用。
近代建築のシステムの中でつくられてしまった建築家像を一度全部捨て、建築家というより一人の人間として一緒にものを考えてつくるとどうなるか。建築家と一人の人間を区別せず、“建築家で何ができるか"という 鎧 (よろい)を捨てると、もっと違ったものが見えてくるはずだと思った
【伊東豊雄】プリツカー賞受賞の伊東氏にインタビュー ~ 建設通信新聞の公式記事ブログ
みんなの家(2011年)
出典:http://itojuku.or.jp/ourhome
このような始原の建築を私は「みんなの家」と呼びたい。そして被災地の避難所や仮設住宅の間に、この「みんなの家」をつくりたい。それは謂わばベッドルームしかない家に共同のリビングルームをつくるような試みです。そこに行くと人々がソファやテーブルを囲んで語り合うことができ、またコーヒーを飲みながら本や新聞を読むことができる、そんな心の安らぎを得られる場所、それが「みんなの家」なのです。それはいかに小さくとも、家を失った人々が心のなかでなら抱くことのできる「私の家」に代わることができるかもしれません。
「みんなの家」に関するページです。
著作・関連書籍
作品集
GAアーキテクト (17) 伊東豊雄 1970-2001―世界の建築家 (GA ARCHITECT Toyo Ito)
- 作者: 伊東豊雄,二川幸夫,原広司
- 出版社/メーカー: エーディーエーエディタトーキョー
- 発売日: 2001/09
- メディア: ペーパーバック
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伊東豊雄 最新プロジェクト(TOYO ITO RECENT PROJECT)
- 作者: 伊東豊雄,Yukio Futagawa
- 出版社/メーカー: ADAエディタトーキョー
- 発売日: 2008/11
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 2回
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公開された2つのデザイン案のポイントと審査方法についての記事です。
スタジアムの躍動感と快適性を比較した記事です。
これまでに新国立に登場した5人の建築家のまとめ記事です。
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