チャンピオンのリバースウィーブについて、個人的に関心があるテーマについて書いた考察集です。レギュラー、復刻の内容もありますが、主にヴィンテージ・リバースウィーブについての考察になります。
目次
80s前半と80s後半のトリコYALE
ボディの大きさにあわせて、プリントの大きさを調整している学校もあれば、ボディの大きさに関係なく、プリントの大きさを幾つも揃えている学校もある。
YALEのプリントの大きさも、いろいろあって、フォントのデザインもいろいろある。
種類がありすぎて、カッコいいYALEもあれば、キャパの広い人向けのYALEもあって、YALEの古着の選択は意外と難しい。
NAVYパーカは、70s初期はフォントが小さい個体があるが、70s後半から80sにかけてプリントとボディのバランスがよくなり、ジャストで着ると、物の良さが分かるので、名品と感じる人も多いのではないかと思う。(リーバイスで言うと66前期みたいな感じ)
抜群の安定度を誇るNAVYに対し、YALEに至っては、染み込みプリントの成分も時おり変化しており、80年代後半からは、洗濯してもプリントが薄くならいようにという親心?なのか、染み込みインクに、油性の成分を混ぜだしている可能性があると思う。
この色あせにくい染み込みプリントは、おそらく好評だったため、現在に続く染み込みプリントのベースになっているような気がする。
プラチゾルも染み込みとして売られている現況を考慮すると、こういう言い方になるだろう。
YALEのフォントの大きさは、大きくは、(大)(中)(小)の3種類があり、80年代のYALE(中)には、中字(レギュラー)と太字(ボールド)があるが、太字は単に中字を太くしたのではなく、フォントの横幅を縮小してプリントの横幅を詰めている。
Mボディには、通常のYALE(中)の横幅だと、トリコの太い袖がYALEの両端に被ってしまうような感じになるので、横幅を詰めた太字の方がバランスがいいと思う。
この太字は両面になっていて、バック面も太字である。
YALEの両面はエラーとも考えられるが、両面とも太字なので、意図的なデザインだった可能性も考えられる。
少し前に、某ヴィンテージショップが、両面YALEのフーディLをオンラインストアに出品して、写真を見たが、想像した通り完璧なバランスとプロポーションだった。
50年代初期のタタキタグ 紺ボディ
最初期のタタキタグ(タグ表にUSA表記や100%コットンの表記がないタイプ)は、50年初期から60年初期頃とすると、このタグをつける紺ボディがあっても不思議ではない。
ただ、リーバイスの53モデルのように、ゴールデンエイジのやたら品質の良いコットン生地の個体があって、紺ボディであっても、50年代前半の製造ではないかと考えてきた。
何年か前に、50年代前半のアポストロフィー付き2桁ナンバリングがついた個体を確認したので、53モデルのように、柔らかでしなやかな生地の個体は50年代前半の紺ボディだったということになる。
この年代のナス紺ボディを好む人がいるが、その人たちの鑑識眼は確かだったことが分かる。
顔料成分が少なく、紺色をつくる配合の違いでナス紺しない個体もあるが、おそらく、そちらの方がコストはかかっているのではないかと思う。
紺色は、青に黒を混ぜるか、青の補色であるオレンジを混ぜるか、青に紫を混ぜることでつくれるが、紺ボディにつかわれているのは、青に黒か、青に紫だろう。
タグが青系の顔料か染料で染まっている個体があることから、通常は、青系が落ちて、紫系が残り、ナス紺化する(そう考えているだけで実際は違うのかもしれない)。
セカンドパテントの初期タグにも、Co. , Inc.とCo. Inc.の少なくとも2種類があって、カンマ付きは、それ以後の年代でもあったりなかったりするが、ついている方が正式と考えられた時代があって、アポストロフィーも含めて、ありとなしの両方あったが、今はつけない方で統一されている。
ブルーの染み込みプリント
洗濯を重ねると、油性成分の入らない純粋な染み込みプリントの色はだんだんと薄くなる。
色落ちが進むと、おっさんになって、街中でプリントものを着ても、それほど目立たないので、染み込みというプリントは、うまく出来ていると思う。
デニムの色落ちにプリントの色をあわせると、日々、朽ち果てていく感じがさらに深まっていく。
だが、そうした侘び寂び?な趣味も後で覚えたものである。
収集する気はなかったが、パーツの寸法や色落ちの微妙な違いが気になって、1年に1〜2枚買い続けていると、けっこうな枚数になってしまった。
パッと見、同じものが複数あるように見えるが、裾の開きなど、エイジングの癖がひとつずつ違っていて、着た感じがひとつひとつ全然違う。
いい物であれば、現行品も買うが、ハンカチ1枚とっても、多くの物や分野で、どこかの年代からか、物づくりより利益追求の視点が強くなっていて、明らかに古い物のほうが、品質は良いと確信することが多くなった。
断定はできないが、70年~80年代のリバースも、ファーストやダブルエックスと同じように、焼肉屋さんには、着て行かない方がいい日が来るかもしれないしれない。(タレをこぼすと落ちない場合がある)
チャンピオンの古着全般として、どれが高いとかあっても、価値判断は、人それぞれみたいなところがあるのではないかと思う。
昭和世代で、富裕層の子どもでなければ、春秋冬は、セーターではなく、バッタもんのトレーナー(ブートスヌーピーなど)を着せられていたので、何を着たとしても、やがて原点であるトレーナーに回帰するのは、自然なことだった。
1970年頃の日本はまだ全体的に貧しく、冬に裏起毛のないペラペラなトレーナーを着て、青鼻を垂らしてる子どもがほとんどだった。
そのため、80年代から90年代のあか抜けたリバースウィーブを見て、これが本物のトレーナー(スウェット)だったのか! と感動するのも、それは致し方ないことだと思う。
50年代のナス紺という例外はあるが、個人的なエイジング価値で判断すると、80年代前半の柔らかくなる前の霜降りの強いグレーのボディがリバースウィーブのコアな年代と考えてきた。
それより古い個体に対しては、長年、慎重姿勢を崩していなかったが、最近は70s初期アンダーバー10%ポリの霜降っていない生地の堅牢さもいいなと思い始めている。
70s単色10%アクリは、むら糸で織られた生地の個体があって、リバースウィーブ的には品質がよくないが、ヴィンテージリーバイス基準では好まれるポイントなので、毛玉感ある生地が将来的には評価されるかもしれない。
そのうち、オートミールのタタキがいいと思い始めるかもしれないが、その頃には玉が枯渇して、5万円以下では流通しなくなっているだろうから、買い増す機会はおそらく訪れないだろう。
と、思っていたが、最近のリバースブームもとりあえず落ち着いた感じがするので、本当に好きなクラスタにはいい状況に戻ったと思う。
リーバイスの古着も、2008年頃は、色落ちしたダブルエックスで4万、47モデルで7万円ぐらいでワゴンセールをしていたから、ユーズド相場には波があるのだろう。
誰が古着のスウェットを何十万円も出して買うのか不思議に思っていたが、裕福な家の子は、庶民の子が着ていた(ブート)トレーナーに果てしない憧れを持っていることが多く、法外とも思える高値にもひるむことなく買い向かっていったのではないかと思う。(想像)
実際、リバースウィーブは、プリントを毎日鑑賞しても見飽きないし、日常的にも着れるので、コレクション対象としては、茶器や絵画や骨董品の収集よりはモダンという判断なのかもしれない。
COAST GUARDのパーカ
リーバースウィーブは、主にグレーを持っていますが、どちらかと言えば、紺の方が似合うので、紺も必要最低限、持っています。
気に入った個体を買っていると、キリがないことがあり、ミリタリーでは、USAFAとCOAST GUARD(コーストガード)は買わないようにしていましたが、古着屋さんでコーストガードのボロいパーカを着ると、思いの他しっくりしたので買うことにしました。
数年前に、もう少しいい状態のコーストガードのパーカが欲しいと思い、メルカリで2万3000円ぐらいで、古い字体のトリコMフーディ―が出品されていたので、出品者に2万円にまかりませんか? とメッセージを送ると、いいよということで、価格が2万円に変わりました。(この時は2万円でも破格の金額)
そうしたら、2万円に価格が変わった途端、誰かが買ってしまったんですね…
メルカリのルール上、この買い方は問題ないんですが、買った人はよほど、コーストガードのパーカが欲しかったのだと思い、感動しました。
最近、リーバイスのヴィンテージのいい個体が、市場にたくさん流出してきているので、むかしはたくさんあったコーストガードのパーカも出ているだろうと思い探してみると、これが全然見つからないんですね。
個人的には、リバースウィーブのブームはピークをうったと考えていますが、もしかしたら、ミリタリーものが、ピークをつけるのは、これからかもしれないと思いました。
数年前は人気のなかったヴィンテージ チャンピオンのTシャツも、最近はいいプリントは入手が難しくなっていますし、染み込みのオリジナルプリントが、どうみてもアートだという認識を持つ方が増えているのかもしれません。
関連記事