スパゲティミートソース。甘酸っぱくも濃厚なスパゲティミートソースの愛好家に、ボローニャで食べたそのオリジナルであるタリアッテレ・ア・ラグーを報告しようと思う。
目次
スパゲティミートソースの旅
B級グルメのレビューをライフワークとしている。長年の食べすぎ、飲みすぎからアレルギーを発症した。ただ、アルコールや大好きなジャンクフードを控えているとえらいもので、アレルギー症状もずいぶん落ち着いてきた。
これをチャンスとばかりにかねてから念願だったスパゲティミートソースのオリジナルを食べにイタリアに行くことにした。今度いつアレルギーが発症するかわからないのだ。
僕は欲深い大人の濃厚イタリアンシリーズでボローニャを知った
イタリアのどこに行けばいいのかはすでに知っていた。レトルトのミートソースのパッケージで知ったのだ。ボロネーゼと書いてあるが、これがスパゲティミートソースであることは食べて知っていた。
欲深い大人の濃厚イタリアン青の洞窟シリーズ。高級1人前パスタソースの代名詞です。イタリアのこだわりをふんだんに商品に反映させており、一人で食べる昼食・夕食を少し贅沢に演出します。ボロネーゼの発祥は「イタリアのエミリア・ロマーニャ州/ボローニャ」
欲深い大人の濃厚イタリアン青の洞窟シリーズの商品説明に、スパゲティミートソースの発祥はボローニャと書いてあるのだ。
このレトルトのミートソースを食べながら、この説明を読んでいれば、いずれボローニャに行ってみたいというのは必然なのだろう。
フランダースの犬を見た日本の子どもが大きくなって、どこかの国の教会に大挙して訪ねてきて現地の人が困ってしまったというニュースがあった。
このエントリーは、そうしたミートソース愛好家が続出することを想定しての記録である。ミートソース好きはいつかボローニャを目指してほしい。
いきなりボローニャへ
とりあえずフィレンツェ行ってそこからボローニャに行ったわけだが、途中経過は電車に乗ってるだけなので、いきなりボローニャのお目当ての店先からはじまる。
覚えたイタリア語は、ボンジョルノ(こんにちは)、グラッツィエ(ありがとう)、タリアッテレ・ア・ラグー(スパゲティミートソースの現地名)。
極端なことを言ってしまうと、この3語だけでこと足りてしまう。現地の言葉がまったく話せなくても旅ができることはかなりむかしに学んでいた。
飲食店で間違ったオーダーをしても、食べれるものと飲めるものが出てくるのは間違いないが、スパゲティミートソースが出てこないのは困るのだ。だからタリアッテレ・ア・ラグーは覚える必要があった。
予約をせずにお目当ての店に行ってみると、満席だった。日曜だったのだ。ボローニャで一泊してもいいのだが、イタリアでは絵も見たかったので、さくっと目的をすますことにした。ヨーロッパで絵を見るのが好きなのである。なぜヨーロッパで絵を見るのが好きなんだろうと考えてみると、理由はひとつである。
ここでも教会と同じくテレビアニメのフランダースの犬を見ていたのである。偏見かもしれないが、ヨーロッパに絵を見に行く人はだいたい子どもの時にフランダースの犬を見ているのである。パブロフの犬的に、ヨーロッパ=絵となってしまうのである。しかし、それはあながち間違っていないのである。
さらに教会も見たかったということもある…教会を見たいのはフランダースの犬とは違う別の理由があるのだが、要は欲深い大人になってしまったのである。
脱線してしまったが、ボロネーゼが食べたくてイタリアに来たのだが、絵も教会も相当に見たくなっていた。ヨーロッパの店は待ってもあかないことが多いので、別の店を探すことにした。旅とは決断の連続なのである。
ボローニャでタリアッテレ・ア・ラグーを食べる
お目当ての店に着くまでに、ボローニャ大学の周辺に食堂やバーがあったのでその辺りで探すことにした。
店先にメニューが出ている店が多いので、そのメニューを見て、タリアッテレ・ア・ラグーがあるかチェックすればいいわけだ。
そもそもボローニャとは
ボローニャとは、食と大学の都と呼ばれる中世からの街で、1500年代につくられた最初の大学施設があったりする。その大学施設も公開されていて、目玉は解剖学実験室である。
中央に解剖台が置かれ、まわりを席が取り囲む小劇場のようなつくりになっている。人体の仕組みへの興味や関心が高まるように設計されている。
「諸君、これが盲腸だ!」「ウォー!」なんてこともあったかもしれない。
しかし、それが近代医学に発展し、多くの人の命を救ったのがだから感慨深い。
写真には撮らなかったが、ボローニャ大学付属博物館の人体関係の展示室には、恍惚の表情を浮かべながら解剖される有名な女性像があったりする。
お土産で売ってる絵巻的なイラストカードにも描かれている。1500年代には人体は物質になっていたんですね。
薔薇の名前を書いたウンベルト・エーコはボローニャ大学の教授ということなので、ボローニャというのは中世のかなり濃い街なんだろう。
グルメレビューの流れとしては、かなりおかしくなってしまったが、しっかりミートソースを食べよう。
ボローニャ大学前のビアバーで
ボローニャ大学の周辺で店に掲げてあるメニューをチェックして歩いた。といっても、ボローニャ大学は中心市街の至るところに散らばっている。
この店のメニューにタリアッテレ・ア・ラグーと書いてある。
入ろう。
ビアバーなのでビールとタリアッテレ・ア・ラグーを頼む。 スタンディングのビアバーと軽食が食べれるテーブル席という構成になっているんですね。
これか。スパゲティミートソースのオリジナルはオムレツのような形をしているのか?
おそらくフライパンからそのまま皿に移されたのでこうした形をしているのだろう。このラフな感じがいい。
ボローニャはもともと農業的にも豊かな土地でむかしから裕福だったらしい。裕福だったので、牛肉の煮込みをパスタにたっぷりかけたのがタリアッテレ・ア・ラグーの起源だ。
だからかどうかは分からないが、お肉がしっかりのるようにパスタは平麺(タリアッテレ)である。ラグーが肉の煮込みですね。
このままでもいいのだが、せっかくなので自分でかたちを整えてみる。
これだ! 食べたかったのはこれだ! タバスコはイタリアでは使わないのでナシで食べる。うまい!
こんな手軽な感じのスパゲティミートソースのオリジナルが食べたかったのだ。食べたいのはレストランで供されるようなタリアッテレ・ア・ラグーではなかった。
いつでもグルメ情報と自分が食べたいものの間にはズレがある。
日本のスパゲティミートソースは、タリアッテレ・ア・ラグーがアメリカでスパゲティミートソースに変化して、日本に入ってきたような感じだが、その流れをしっかりと確認したかったのである。完全に確認できた。ミッション終了。
Studio7. (この店の評価はぱっかりとわかれている。)
カメリエーレ (ウェイター)がエスプレッソをどうかと言うのでもらった。
僕は満足してエスプレッソを飲みながら読みかけだった「薔薇の名前」を少し読んだ。
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異端審問も神学論争も頭に入らず、僕はまったく別のことを考えていた。
よし、もうひと皿、タリアッテレ・ア・ラグーを食べよう。
会計を支払おうとすると、店主とウェイターはどこかに消えていた。消えていたというのも変だが、近所で騒ぎがあったのか誰かが呼びにきて2人ともついていってしまったのだ。
誰かいるだろうと、カウンターの方に行くと、白い調理服を着た女性が出てきた。料理していたのは30~40代の女性だったのだ。自分が満足できた理由は、おそらく家庭の味が入っていることだった。
そして、中世の街でお腹がすくのを夜まで待った。もうひと皿行くぞ…
ボローニャのイータリーで
日本にもあるイタリア食材のイータリーがボローニャにもあったのでそこで食べることにした。本屋と合体したようなイータリーでカジュアルなのとレストラン的なのがある。タリアッテレ・ア・ラグーが食べれればいいのでカジュアルだ。
頼んだスパークリングのロゼは抜群においしかった。色も美しい。
パンは持ち帰れるようにか紙袋に入れてある。パンは残るのでこれは便利だ。
きた。
皿に書いてあるイータリーの文字が逆だが、イータリーの世界中のSNS画像を調べると、いろいろな向きがあるので、向こうはそれほどこだわらないようだ。
日本だと茶道の伝統から器の正面という概念がある。
ビアバーと比べて色が薄い。味は上品であるが、スパゲティミートソースのフィレンツェ→アメリカ→日本の流れとはちょっと違う味だ。
これはスパゲティミートソースには変化しにくい味だ。どちらかというと、レストラン系統の味で、タリアッテレ・ア・ラグーにとどまる味だ。
タリアッテレ・ア・ラグーにも、スパゲティミートソースに変化できるものと変化しにくいものがあるということがわかった。
イータリーということで、分かっていたんですけどね。むしろ、自分がイメージした味がイータリーではでないことに満足した。
ボローニャには泊まらずに、フィレンツェに戻ることにした。ボローニャは少し濃かったのだ。
フィレンツェでもタリアッテレ・ア・ラグーを食べる
フィレンツェでもタリアッテレ・ア・ラグーを食べたくなった。これは次の日なので、2日間で3回食べたことになる。
駅周辺でメニューを見ながら探した。
フィレンツェ駅近くの食堂で
なんとなくツーリストウェルカム的な雰囲気がある。メニューには、タリアッテレ・ア・ラグーがある。しかも、スパゲティミートソースまである。スパゲティミートソースが食べたい。
タリアッテレ・ア・ラグーを頼むのか、スパゲティミートソースを頼むのかで最後まで揺れた。
自分の直感を信じることができずにタリアッテレ・ア・ラグーを頼むことにした。
ボローニャで食べたタリアッテレ・ア・ラグーよりもいろんなスパイスが効いていた。欲深い大人のボロネーゼに一番近い味はこの店だった。この店では男性が調理していたので味にエッジを効かせていたのだ。
もしかしたら、この店はスパゲティミートソースの方がおいしいかもしれない。
スパゲティミートソースに変化しようとしているタリアッテレ・ア・ラグーだった。つまり麺を細くして肉を細かくした方が濃厚な旨みを感じられるというわけだった。
この店はスパゲティミートソースの方がおいしいだろうと思うと、タリアッテレ・ア・ラグーがスパゲティミートソースに変化していく様や歴史が頭の中に走馬燈のように駆け巡った。
なぜタリアッテレ・ア・ラグーがスパゲティミートソースに変化したのかを味覚レベルで理解した。そして僕のスパゲティミートソースの旅は終わった。
次の日は、タリアッテレ・ア・ラグーではさびしい感じもしたので、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナという炭火のビフテキを食べることにした。ミートソースの旅は終わっていたのである。物事の終わりはいつも突然だ。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ定食を食べる
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナは、Tボーンステーキなので、1㎏ぐらいのサイズになる。T字型の骨をはさんでロースとヒレ肉がついていて、しかも炭火となると、大きな肉の塊でないとうまく焼けないのだ。
しかし、フィレンツェ名物でもあるので、一人分の定食みたいなセットを出している店もある。
メニューを見て歩いていたらこの店にあった。35ユーロと値がはるが、牛肉が500gもあるのでそんなものだろうとも言える。
ビールを頼んで肉の到着を待つ。はやくお肉をよこしなさい。
肉だけでもいいのだが、セットなので前菜が出てきてしまった。
イタリアなのでイタリアンな前菜である。
普通ならこれでお腹がいっぱいになってしまうのだが、お肉は別腹である。
キター! デカい…
Tボーンの部分ではあるが、Tボーンのとこで半分に割ってロースの部分をくれている。だから、正式なビステッカ・アッラ・フィオレンティーナではない。それはどうでもよいことだった。肉が食べたかったのだ。
それにとんかつ屋ではカッコつけて、ヒレカツを頼んだりするが、本当に好きなのはロースカツなのだ。
食べよう。
表面だけ焼けて中がレアだ。いい焼け具合だ。
お肉自体は、野趣味あふれるテイストだ。和牛とは違う。ライムを視覚に入れながら粗い岩塩で食べる。
いつもは岩塩をひいているが、ひかない感じも風味が感じられておいしい。肉の味がする。完食。
デザートもワイルドな感じだ。
口の中が甘くなったので、ホテルのバーで一杯だけワインをもらった。
営業時間は過ぎていたみたいだった。
ホテルの屋根にあがって、メディチ家とブルネルレスキのドームを見た。
フィレンツェでも好きなアングルだ。僕はふいに血圧が上昇するのを感じた。
LDLコレステロールがかなりあがった感じがする。軽く200は突破しただろう。アレルギー再発まであとどの位食べられるだろうかと思った。
フィレンツェのジェラートは格別においしい。フィレンツェはアイスクリームの起源となった街でもあったのだ。フィレンツェのジェラートが何個食べられるかだけが心配だった。イタリアンジェラートの旅が始まっていたのである。
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