京都に住んでいた時に枯山水の庭をよく訪れていました。
竜安寺石庭に代表される枯山水は、石や岩や水だけを使って自然の形象を表現した庭園様式と言われてますが、その意味するところは深く、ぱっと見て分からないものがあります。
砂の紋様が水の流れを表現し、立石が蓬莱山を表していると説明されれば、なるほどと思うものの、良く分らなかったというのが正直な感想になります。
ただ、分からないなりに見ていますと枯山水の庭にすーっと意識が入りこんで、身体がまわりに溶けこむような瞬間がありました。もっとも、ほとんどは亀島とか鶴島とか造形的な面白さを分別して見ていました。
そんな中から訪れて印象的だった京都のおすすめ枯山水を七つ選んでみました。 生きているうちに申し込んでも見たい名跡についても紹介しています。
目次
京都の枯山水 私選ベスト7
フリッカーから自分の見た印象に近い写真をシェアリングしました。写真をクリックするとリンク先の大きな写真に飛びます。
1 西芳寺 (鎌倉時代)
一般には苔寺の名で呼ばれています。とにかく一面の苔に圧倒されます。写真は苔寺の池泉式庭園の部分です。苔の世界に包まれたまま300年ぐらい経っていても気づかない時間感覚があります。別次元の中にある庭のような感じがしましたので1位にしました。山腹に重厚な枯山水があります。スティーブ・ジョブズがお忍びで何度も訪れた場所です。
夢窓国師による作庭。夢窓疎石は禅文化の基礎をつくった高僧。嵐山の借景が息をのむほど素晴らしい天龍寺(池泉式庭園)も夢窓国師による禅の庭。
2 竜安寺 (室町時代)
方丈庭園「虎の子渡し」。世界遺産です。大小15個の石が無常の中の普遍を問います。京都特有のさぁーっとした雨が降っている時に行きますと、静寂感が増してより印象的でした。人が少ないということもあります。写真を見てるだけですっと心が落ち着きます。やっぱりいいですね。
3 円通寺 (江戸時代)
わからないなりに枯山水の庭を見てきて、リニアな枯山水と比叡山の拡がりがすっと心に入ってきました。借景式庭園の至宝です。借景やロケーションも含めた総合性では一番のおすすめです。この景観を守るために京都市が建物高さの条例を制定しています。
4 芬陀院 / 東福寺(室町時代)
東福寺にはたくさんの塔頭があり、たくさんの禅の庭があります。紅葉がものすごく有名なので、特別拝観の禅庭以外は紅葉シーズンを外した方がゆっくり見れます。
いわゆる雪舟寺です。雪舟による作庭です。右が亀島で、左が鶴島になります。この亀島と鶴島の照応感がたまらないですね。亀島の向うの起立した石の形もたまらないです。昭和の作庭家 重森三玲 が修復しました。
雪舟の「那智瀧図」が好きなんで、見ているだけで雪舟の世界観がじわじわ拡がってきます。
東福寺方丈北庭(昭和)
重森三玲による枯山水です。昭和の枯山水はやはりモダンな感じがします。一度見ると脳裏に刻まれます。重森三玲は数多くの名枯山水を残しています。
※2017年東福寺 秋の特別拝観 11月1日~12月3日
京都でも最も美しい東福寺の紅葉と重森三玲作の方丈八相庭園、龍吟庵(国宝)も公開中。
5 孤篷庵 / 大徳寺(江戸時代)
大徳寺にはたくさんの塔頭があって、数多くの枯山水があります。最も印象に残ったのが孤篷庵です。孤篷庵だけ少し離れた場所にあります。大仙院の枯山水もすごい迫力です。
小堀遠州(小堀政一)による茶室「忘筌」。明かり障子下半分が抜けていてそこから見る枯山水です。にじり口に相当する部分です。天才による計算されつくした枯山水ですが見たら、あっとなります。小堀遠州の世界観が結晶化したように見えます。
忘筌の公開日です。
◆平成27年秋季特別拝観期間:9月18日(金)~10月4日(日)
6 龍源院 / 大徳寺 (江戸時代)
これも大徳寺の塔頭です。こちらの意表をつくような枯山水。狭い空間に広大な宇宙を閉じ込めたようで見るとどきっとなります。まさに禅ですね。
7 退蔵院 / 妙心寺(室町時代)
狩野派の画聖 狩野元信の作庭と言われる「元信の庭」。白砂により、水が滝から大海に流れ出る形象を表現し、鶴島、亀島、蓬莱石が分かりやすく配置されています。リアルな襖絵として築庭されたものなので、こうした見方も楽しいのではないかと思います。
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リストには入れませんでしたが、少し変わった感覚の枯山水を紹介します。正伝寺です。石を使っていないことや借景式ということもあり、なぜかほっこりしてしまうんですね。 比叡山の借景が好きなのかもしれません。
正伝寺(江戸時代)
枯山水 私選ベスト7と正伝寺の地図です。
1位の苔寺は申し込み制なので、事前にはがきで申し込む必要があります。京都は申し込み制の名跡が意外と多いんですね。
申し込み先です。
こちらのサイトが分かりやすいです。
最後に、申し込み制で印象的だった京都の名跡を三つ選んでみました。
申し込んでも見たい京都の名跡ベスト3
生きてる間に見たい名跡です。
1. 修学院離宮 (江戸時代)
予備知識なしに行くと単なる里山ではないかという人もいます(笑)。ものすごく手がかかっていますし、自然美以上のものはつくりえないということでしょうか。皇室文化の最高峰。
宮内庁のオンライン申込みのページです。
2.桂離宮 (江戸時代)
桂離宮です。敷地内に様々な意匠が散りばめられています。この雁行配置が迫力あるんですね。船着場側から見る笑意軒も田舎風でいい感じです。
足元廻りの完全なディテール。ブルーノ・タウト激賞です。
宮内庁のオンライン申込みのページです。
3.妙喜庵(安土桃山時代)
国宝の茶室「待庵(たいあん)」があります。写真の左側です。千利休によるニ畳大目。茶室の極致です。妙喜庵の正面までは何度も行ってますが、中には入ってません。楽しみに置いてあるんですね。何度も行っているというのは、直近にサントリーの山崎蒸留所があるのでそこに行ってウイスキーを飲んでるんですね。日本の至宝です。
申し込み先です。
申し込んでも見たい京都の名跡の地図です。
枯山水 関連書籍
枯山水( 美の壺シリーズ)
芸術としての枯山水の見方をうまくまとめてあります。
枯山水の見方 三つのツボ
壱のツボ 水なくして水を感じよ
弐のツボ 立つ石に大地の力を感じよ
参のツボ 額縁の向こうに小宇宙あり
こうした見方をしても面白いし、理解が進むので入門用にいいのではないかと思いました。歴史や用語についても解説してあります。
京都・禅の名庭
枯山水を見ることに集中したい人は、写真撮影はあきらめて、見る方に徹した方がいいかもしれません。こうした小型の写真集を持っておくのもおすすめです。
京の庭
京都の名園20選です。本当のエッセンスですね。名園がたくさん掲載された類書は多いですが絞ったものは少ないです。
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清水寺成就院
最後に、個人的に一番感動した庭園を紹介します。清水寺成就院です。鎌倉の「あじさい」もいいですが、京都の「月の庭」の方です。
" 相阿弥作・小堀遠州の補修とも、松永貞徳の作とも伝えられいる借景式・池泉観賞式の庭園 "です。庭の構造がパースペクティブとなって迫ってきました。迫ってきたのは見えている奥行ではなくて、物事の奥行でした。それが突然ばっと迫ってきました。
成就院の今年の公開日です。
◆2017年11月18日~12月3日(9:00~16:00 受付終了、夜間公開 18:00~20:30 受付終了)
京都では枯山水を見ているつもりでいつのまにか池泉式庭園の前に佇んでいることがありました。
迷いのなかにあって悟るのが仏であり、悟りのなかにあって迷いを重ねるのが衆生といったことをおそらく道元禅師が言っておられます。
京都には枯山水の庭が数えきれないほどあって、どこを見たか覚えてないほど、数だけは枯山水の庭を見ました。結局、枯山水が悟りの世界かどうかについては良く分かりませんでした。直観的にはたぶんそうなんだろうと思います。
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