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「村上さんのところ」書籍版とコンプリート版 / 掲載されたやりとりの傾向

「村上さんのところ」には、3万7465通のメールが寄せられ、3716通がやりとりとなり、そのうち473のやりとりが書籍版に選ばれました。村上さんとスタッフの方たちで選んだということです。

選ばれなかった3243のやりとりも惜しい! ということになり、電子ブックのコンプリート版になりました。

24日の発売日には書籍版を買いました。中身はウェブサイトでよく読んでいましたので、どのやりとりが書籍版に選ばれ、どのやりとりが選ばれなかったのか興味がありました。 

村上さんのところ

村上さんのところ

 

 

 自分のブックマークを分けてみた

ためしに自分が面白い!と思ってブックマークしたやりとりの幾つかを書籍版に選ばれたものと、コンプリート版にしか掲載されなかったものとに分けてみました。

書籍版に選ばれたやりとりとコンプリート版のみに掲載されているやりとりには微妙な傾向らしきものがありました。

 

リストは、質問のタイトルと村上さんの回答の一、二行の引用のみなので、やりとりの雰囲気がわかる程度です。インデックスです。 

 

1.書籍版に選ばれたやりとり

   

 子供のいない人生

人生を生きるという作業のクォリティーがそれで左右されるということはありません。作業の方向性が少し変わるだけです。

 

批判されるのが恐い

 僕は自分が嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりするのが普通の状態だと思って生きてきました。そう思うと、嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりしても、あまりこたえなくなります。

 

 ななを想う

僕は人生に寂しくなると、長野の小諸市動物園の雌ライオン、ななちゃんのことを思い出します。僕はななちゃんの檻の前でずいぶん長い時間を過ごしました。じっと顔を見合わせながら。 

 

猫奴というやつですね

猫の柔らかいおなかを意味なく触っていると、幸福な気持ちになれます。そういうところが好きです。猫奴なんですね。

 

音楽系と絵画系

小説の文体って、音楽系と絵画系にわかれるというのが僕の説です。絵画系の人の文章ってとても美しいんだけど、ときどき細部にこだわりすぎて、流れがふと止まってしまうことがあります。 

 

結末はいつ考えているのですか

いつもだいたい結論は、書いているうちに自然にすっと出てきます。その「すっと」という感じがいいんです。

 

身近な人の死の受け止め方

もしあなたのなかに空洞があるのなら、その空洞をできるだけそのままに保存しておくというのも、大事なことではないかと思います。

 

批判に対する心構えとは

どれだけこっぴどく批判されても、何もつくり出さずに批判だけする側に回るよりは、何かをつくり出して批判される側に回る方が、まだいいよな」と思えるはずです。

 

 さて、かばんに何を入れようか

僕は基本的に、人生とはただの容れ物だと思っています。空っぽのかばんみたいなものです。そこに何を入れていくか(何を入れていかないか)はあくまで本人次第です。 

 

悪しき物語に対抗するために

自分の物語を、できるだけ「善き物語」(決して倫理的にgoodということではありません)に近づけていきたいというのが、僕の一貫した気持ちです。

 

村上さんの生き方の原点は?

それぞれの段階で身銭を切っていろんなことを学んで、それが身についてきたということだと思います。身銭を切るって大事ですよね。他人のお金を使っていては、何も身につきません。

 

根源的な魂の闇を描くために

日本の純文学って、その「どろどろしたもの」を描かなくてはならないみたいにずっと思われていて、僕はそういうのにどうしても馴染めませんでした。そういうものを描かなくても、人の魂の深く暗いところはきっと描けるはずだと強く信じていました。それで35年くらいその方法をずっと模索してきました。

 

文章の手本を見つけましょう

情景描写と心理描写と会話、というのがだいたいにおいて、小説にとっての三要素みたいになります。この三つをどうブレンドしていくかというのが、小説家の腕の見せ所です。

 

わかりにくい小説と人は言うけれど

いろんなルートから上れる山みたいな小説が書けるといいなと、僕は常々思っています。簡単に上れるルート、中級の登山者のためのルート、それからかなり難度の高い上級者向けのちょっと危険なルートと、同じひとつの山にそういういくつかの選択肢があるといいなと。

 

自分を好きになる必要はあるのか

自分のことを好きになる必要なんて何もありません。どうして自分のことを好きにならなくちゃいけないんですか? 誰がそんなことを決めたんですか? まず自分に何ができるかを考えてください。そしてそれを、少しでもいいからやってみてください。手を動かして、身体を動かして。それから自分のことが好きになれるかどうか、考えてみたらどうですか?

 

善と悪のたたかい

どんな時代でも、悪と善の量のバランスというのはほとんど変わりません。善が比較的多い時代とか、悪が比較的多い時代とか、そういうのはありません。だいたいどの時代でも同じです。あなたはがっかりするかもしれませんが、世界とはそういう風にできているみたいです。

 

翻訳で補えない領域は存在するか?

しかしその表層を一枚剥いだ物語レベルにおいては、ほとんどそのままの内容が伝達可能であるはずだと、僕は考えています。作家としても、翻訳者としても、そう考えています。 

 

私一人が読んでも読まなくても

でもそれはこの地上での話であって、足元のずっと下の方の暗くて深いところでは、きみが僕の本を読んでくれないことで、僕は少し傷つくことになるかもしれません。

 

「僕」の中に混入してきた「俺」の謎

「僕」と「俺」「おれ」はもちろん意図的に、微妙に使い分けています。そう思って読んでくれますか? 人称というのは僕にとってはかなり大事な問題で、いつもそのことを意識しています。

 

小説家としての冥利

出口を見失って苦しんでいる人に、「出口はあるかもしれない」と思わせることができたらいいなあと思っています。もし誰かにそういう影響を与えられたら、小説家としては冥利に尽きます。

 

翻訳を志す韓国人です

翻訳って、とても大事な仕事なんです。言葉は違っていても、人の考えることって基本的に同じなんだということを実証するための作業ですから

 

本や映画を評価するときのスタンスは?

野球場に行ったらスコアボードではなく、試合そのものをじっくり見ましょう。それと同じことです。

   

 以上が、書籍版に掲載されたやりとりのほんの一部のインデックスです。以下は、コンプリート版になります。

 

 

2.コンプリート版のみに掲載されているやりとり 

 

 女性は輝かないといけないの?

 あなたも自分の居場所をうまくみつけて、そこでそこそこに幸せに生きていってください。とくにがんばらなくてもいいです。

 

人生という実験室

 自分の人生というのは実験室みたいなものだと考えることです。

 

不安や絶望がよぎることがありますか?

でも自分の存在ということを考えてみると、また自分の魂のあり方みたいなことを考えると、高く切り立った暗い崖の前にひとりぼっちで立っているような気がすることはあります。

 

独特の世界観が書けるのはなぜ?

で、きみの世界観と僕の世界観はおそらく、ずっと地底深くでちょっとつながっているわけです。小指の先っぽと先っぽくらいで。そう考えるとけっこう面白いですよね。

 

整然とした都市計画が嫌い

うちの猫が一橋大学の陸上トラックでうんこしたのは、僕に追いつけなかった腹いせです。かなり性格のきつい雌のシャム猫だったので。一橋大学には悪いことをしたと思っています。

 

”結婚”という沼に飛び込む

わけのわからない池か沼に頭から飛び込むみたいなものですから。

 

やりたいことが見つからない高3生より

僕ももう60を過ぎていますが、今でもよく不安になります。どうしたらいいのかなと迷ったりします。

 

隠れ村上主義者として生きる

僕はもともととても個人的な人間なので、いつもだいたい同じようにしか生きられないんです。地下鉄に乗って中古レコード屋に行って、ときどき鰻を食べています。

 

小説の使命

こんなつまらない世界も、一皮むけば、けっこう面白いことになっているかもしれません。そのような可能性を具体的に示していくのが、小説の使命なのです。

 

今の日本がイヤになってませんか?

僕は小説を書く人間なので、良いも悪いも、今ここにあるものをじっくりと正確に観察することが仕事です。良いとか悪いとかは、できるだけ判断を避けるようにしています。

 

創作とチーム・プレイ

長時間一人でいることがまったく苦にならないたちなので、小説家に向いているかもしれません。

 

違和感があると言われるんですが

でも僕も僕自身に対して、違和感のようなものを感じることはたまにあります。ぼくはいったい何を考えているのだろう、なんでこんなことをしているのだろう、とか。だから人が人に対して違和感を感じるのは、むしろ普通のことなんじゃないのかな。

 

万人受けする小説とは思えませんが

「あんなものどこがいいんだ? どこが面白いんだ?」と言われるとちょっとほっとしたりしてね。内緒ですが。

 

集団的意識とエクルスケーキ

ただ僕は基本的に、人間の意識というのは地表では個別のものだけど、ずっと地下深くに潜っていくと、あちこちで相互的にくっつきあっているものだという感覚を持っています。ですから、物語という穴をどんどん深く掘っていけば、その繋がりに訴えかけることができるはずだと。それが僕の小説を書く目的であり、方法であるわけです。

 

村上さんは神話を書いているんですか?

僕が小説を書くときも、そのような無意識下のイメージをできるだけ繋げていきたいという思いがあります。あなたは僕のそのような思いにうまく感応してくださっているのかもしれません。だとしたら、僕としても嬉しいです。

 

何のために走らなくてはならないか

ものを書くには体力はどうしても必要だし、それを維持するには、身体をフィジカルに動かし続けるしかないからです。

 

他人をうらやましいと思いますか?

そういう方に頭がいかなかった。あなたがおっしゃるように「僕は僕だし、他の人は他の人だし」と思っていました。

 

風のことを考えよう

それはトルーマン・カポーティの短編小説「最後の扉を閉めて」の最後の一行ですね。/Think of nothing things, think of wind./最初の小説『風の歌を聴け』のタイトルも、この文章のイメージから生まれたものです。

 

妄想しちゃって勉強できません

妄想することが僕の仕事の一部です。妄想というのは、頭の中で自分を仮説に巻き込んでいくことです。つまり「自分がこうあるかもしれない姿」をどんどん追求していく。

 

僕のモットー

ハンサムにはなれなくても、健康にはなれる、というのが僕のモットーです。

 

意図的に夢を見る

小説家は眠っているときにではなく、目覚めているときに、意図的に夢を見るということと、その続きをいつでも自由に見られるということです。けっこう楽しいですよ。

 

それはあなたの中に潜んでいる

マテリアルのことはあまり考えないで、まず文章を書くことによって、自分の中にあるものを少しずつ引き出していくといいのです。あなたの中には描かれるべき何かが確実に潜んでいます。

 

ファンにとってはたまらない濃さ

やるときはオールアウトでやる。やらないときはいっさいやらない。これが基本方針です。リスクは承知の上で突っ走ります。

 

How could I write without losing inspiration?

However, do not do anything else. Don’t read books. Don’t do SNS. Just sit at the desk, write your story or do nothing. Continuity is the key to your inspiration.

 

どんな質問が多いですか?

恋人がいない、夫婦のセックスレス、不倫、年齢を感じる、将来が不安だ、ヤクルト・スワローズはどうなるんだ……そういう相談が多いです。

 

どうしてこのような結論に到ったか?

自分の人生に意味はあるのか? この仕事に意味があるのか? でも意味っていったい何ですか? 意味の意味ってなんですか? 僕にもよくわかりません。要するに、意味には実体なんてないんです。そこには関係性みたいなものがあるだけです。その関係性はあくまで相対的なものであって、あなたがちょっと立ち位置を変えるだけで変化するものです。

 

逃げた自分を受け入れてもいいかな

もちろん踏みとどまって闘うべきときもありますが、逃げられたら逃げた方がいいということの方が多いかもしれません。前向きに考えよう。

 

セックスすれば飽きてしまう自分

セックスはゴールではありません。出発点みたいなものです。そこからあらためて、人間と人間の深い結びつきが始まるのです。

 

父親を越えられない僕

作家になりたい? 作家になりましょう。本をたくさん読み、人生経験を積極的に積んで、文章力を強化すればいいんです。

 

村上さんがこれから読みたい物語

とても簡単な質問です。次に僕が書く小説に決まっているじゃないですか。

 

I created a Portuguese blog “Murakami PT”

What motivated me to write? I just love to write. I just love to find my own story in the maze of my mind. I would like to share it with other people, for instance, with you.

 

ハルキだけはやめなさい

もしかしたら、クールな子供が生まれたりするのでしょうか?

 

「とりあえず」なのがラクで好きです

とりあえず、ま、いいか。あとのことはまたあとで考えよう。僕もよくそう考えます。猫たちもだいたいそうやって生きているようです。

 

会社を休職しています

人生には井戸の底に座っている時期もあります。でもきっとほどなく抜け出せると思いますよ。希望を失わないように。

 

“Kafka on the Shore” and folk tales

We all have a reservoir of "folk tales" or myths deep in our mind. When we tell our story we often go down to that reservoir and draw some water from it. Maybe our reservoirs are partially mutual. This is my theory.

 

もっと努力か、もっと遊ぶか

もう五十歳であれば、社会に対するいちおうの責任は果たされたと思いますし、そろそろ自分に向いたこと、適したことを追究する方に向かわれた方がよろしいのではないかと、僕は愚考しますが。

 

目標を見失っています

だいたいみんな「これはしょうがないからやっているんだ」と思いながら働いています。そうしないと生活できないから。というわけで、仕事場以外の場所で何か好きなこと、面白そうなことを見つけてください。

  

 

 

 書籍版に選ばれたやりとりを書籍であらためて読み返しますと、質問や相談と村上さんの回答がきれいに決まっていて、村上さんとスタッフの方たちが選んだのもなるほどと思いました。

コンプリート版にしか掲載されていないやりとりには、深夜ラジオのエンディングのようなやりとりが多かったように思いました。少し噛み合っていないように見えたりするんですけども、そこに読者へのインスピレーションとなるような作家の深いところにある考えがかいま見えたりして、感動しました。 

 

(電子ブック コンプリート版) 
村上さんのところ コンプリート版

村上さんのところ コンプリート版

 

 

 

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