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テイラー・スウィフトが流れる共有空間は可能か / ゲストハウスの歴史とシェアハウスの未来

高齢者シェアハウスのイメージ

 

目次  
1. ゲストハウスについて知ってる二、三のこと
2. ゲストハウスとシェアハウスはどう違うか
3. 旅人だけのものではなかったゲストハウス
4. 社会問題と311とメディアが生みだしたもの
5. 輝かしい青春の舞台と拡がりゆく影
6. シェアハウスが終の棲家となる日
7. テイラー・スウィフトが流れる高齢者シェアハウスは可能か

 

 シェアハウスの可能性について考えてみたのは、ある曲を聞いたのがきっかけだった。テイラー・スウィフトが流れるような共有空間は可能だろうか。  

四条を下り寺町を歩いていると、ゲストハウスがあった。懐かしくなって中を覗いてみた。ラジカセからテイラー・スウィフトの曲が流れている。カウンターでは、欧米からのバックパッカーが三人組がチェックアウトの手続きをしている。受付の女子は流暢な英語で話した。テイラーは、けっして戻ることはないと、陽気に歌う。 

「 We Are Never Ever Getting Back Together」が、テラスハウスのオープニング曲に使われたように、テイラー・スウィフトの曲は、シェアハウスとか、ゲストハウスというような共有的空間に似合っているように思える。テイラーの曲が、共有的空間の雰囲気をつくり出し、その空間を象徴しているように聞こえた。よく分らなかった共有的空間を考えるきっかけになった。 

こうした空間をシェアできるのは、若い時だけなのか、高齢者になっても可能なのか、いずれ考えてみたいと思っていた。 

 選挙は与党の勝利で終わったが、世の中が劇的に良くなることはもうないだろう。2000年以降のことも少し思い出してみた。

 

1. ゲストハウスについて知ってる二、三のこと

2006年頃は、リーマンショック前のミニバブルに価値観が揺さぶられていた。そんな頃、沖縄のゲストハウスによく泊まった。ドミトリーと呼ばれる相部屋には、いろんな種類の人間がいた。ゲストハウスには、共同の炊事場や居間があった。誰かがごはんをつくり、一緒に食べさせてもらった。たまたま泊まっている人と海に行ったり、酒を飲んだりした。ドミトリーは一泊1500円。食費は食材代とかで一日約500円。リトルアジアの屋上につくられたバーでは、泡盛が一杯100円だった。ゲストハウスの本棚の横で一日過ごすことも多かった。

 

京都のゲストハウス

ここ寺町にあるカオサン京都は、2010年の開業ということだから、僕が泊った2006年よりも、ゲストハウスは一般的になり、日本各地に広がったということなんだろう。ゲストハウスの魅力は、価格が安いことと、見知らぬ人たちとの出会いだと言われている。滞在するゲストハウスの居心地の良さに沈没し、何ヶ月もステイしたり、住み込む人たちもいた。


2006年のゲストハウスは、バックパッカーだけでなく、普通に明るい男子、元気の良い女子も多くいた。一見普通の明るい若者だが、話してみると、言葉の端々から、彼らがレールから完全に外れていることが分かった。なにげにリストカットの話とか、服用している薬とか、何らかの給付金の話とか、道売りでのエピソードとか。ある種の旅人と同じように、心の闇をかかえて生きる人もいた。バックパッカー崩れとロスジェネ世代の融合。記憶違いでなければ、ホームレスに近い人もいたように思う。総論的にゲストハウスの雰囲気は楽しかった。ユニークな人たちにゲストハウスで多く遭遇した。

 こうした人たちは基本的に多くのモノを持っていなかった。バックパッカーやエグザイル(放浪者・非定住者・リアルノマド)だからということもある。しかしミニマリストと呼ばれることはなかった。ミニマリストという言葉はなかったからだ。

 

シェアハウスに話を戻すと、2006年頃はルームシェアという言葉は聞いたことがあっても、シェアハウスという言葉は聞いたことがなかった。そもそも、ゲストハウスとシェアハウスの違いは何だろうか。一般常識なのかもしれないが、僕は良く分かっていない。だから調べてみた。

 

2. ゲストハウスとシェアハウスはどう違うか

旅行者が1日からでも滞在できるのがゲストハウスで、中~長期の居住型がシェアハウスのような感じだろうか。調べてみると、両者に明確な線引きはなく、1日から泊れるシェアハウスがあったり、実態的には混在しているようだ。複数で賃貸するルームシェアもシェアハウスと呼んだりしているので複雑だ。

国はどう定義しているんだろう。


国によるシェアハウスの定義
今年の夏に、国土交通省がシェアハウスの実態調査を行っている。若者を中心にひろがりを見せている共同居住形態の実態が良く分らないので、調べてみたという感じだろうか。調査結果のアウトラインとして、シェアハウスの累計供給物件数は、2013 年3月末時点で、約1,400 物件、約19,000 戸だそうである。最近は年率約30%で増加中。調査対象は業者ベースのシェアハウスなので、ルームシェアや個人ベースのシェアハウスを含めるともっと増えるだろう。 

報道発表資料:貸しルーム入居者の実態調査の集計結果について - 国土交通省


国はシェアハウスを「新しい居住形態である貸しルーム(いわゆる「シェアハウス」)」という言い方をしている。「貸しルーム」の定義を見てみよう。さすがに簡潔だ。ハヤカワ・SF・シリーズの文体にも似ている。

プライベートなスペースを持ちつつも、他人とトイレ、シャワールーム等の空間を共用しながら住まう、賃貸物件。入居者一人ひとりが運営事業者(家主含む)と個室あるいはベッド単位で契約を結び、トイレ、シャワールーム等の共用の空間は、運営事業者が定期的に掃除するなどの管理を行う。

 

「貸しルーム」は、おそらくは、違法とか脱法の文脈で語られるのだろう。少し前に問題になった脱法ハウスも、今は違法貸しルームと呼ぶようである。建築基準法、消防法以外にも、違法、脱法的な傾向が発生しやすいので、今後、司直の手が入る事態も増えるだろうと思う。 ただ、当国の住宅施策、空き家施策と考えあわせ、「多様な居住ニーズに応じた住居の一形態」として、省庁横断的にあくまでポジティブに考えていくべきだと思う。

この国土交通省の調査は、日本シェアハウス・ゲストハウス連盟の2013年の調査を引用している。元になった報告書を読むと、データにつけられた解説が観察者目線で面白い。

 

結論的には、国はゲストハウスもシェアハウスも「貸しルーム」という言葉で定義しているので、ゲストハウスとシェアハウスの違いや定義に固執する必要はなさそうだ。ただ、「貸しルーム」では表現的に少々さみしい感じがする。

 

3. 旅人だけのものではなかったゲストハウス

『テラスハウス』は、輝かしい青春を送る舞台のイメージだった。その明るいイメージは、レールを多少外れ気味な人たちが好んだゲストハウスとは違う。光と影の両方のイメージが混在しているように感じる。どうしてそのような状況になったのか。ゲストハウス、シェアハウスについて、関連すると思われる事象を時系列的に調べてみた。

 

 先程の報告書では、事業者数推移の統計は、1999年から始まっている。貸しルーム事業者数は、2013 年8月末時点で、全国で約600の業者。1999年からは25倍に増加しているということだ。

 『深夜特急』の最終便が出たのが1992年。猿岩石がアジアからヨーロッパまでヒッチハイクしたのが1996年。最後のバックパッカーブームが1990年代後半。海外旅行のブームがあった。しかし、2001年9月11日以後、アジアを旅していても、雰囲気ががらっと変わってしまった印象がある。

ゲストハウスはタイのカオサン通りなど国外でバックパッカーには馴染み深いものだったが、2000年前後に国内でも増えてきたと記憶している。沖映通りの少し入ったところに新・月光荘がセルフビルドで出来たのが2001年頃ではなかったかと思う。

月光荘沖縄つきのわ | 月光荘・つきのわ

 

アマゾンで「ゲストハウス」をタイトルに含む書籍を検索すると、最も古いと思われる本は1999年の出版である。1999年頃からみていけば、国内のゲストハウスのイメージはつかめるだろう。

 

1999年10月『東京ゲスト・ハウス』が出版される。 

東京ゲスト・ハウス

東京ゲスト・ハウス

 

 ゲストハウスでの出会いと別れを描いた小説。アジアの放浪から戻った若者や何らかの事情を抱えた人たちの溜まり場として、一軒家がゲストハウスに変わっていくような話。小説の最後で、ゲストハウスの持ち主は、王様と呼ばれる一人の住人が嫌になり出て行ってしまう。90年代後半のバックパッカーとか自分探しとかがテーマになっている。 


2004年10月 UR(都市機構)によるハウスシェアリング制度はじまる。 ルームシェアの希望者が増えてきたことへの対応。

UR都市機構|UR賃貸住宅 関東エリア|ハウスシェアリング

この頃、ルームメイトを募集するネットの掲示板も増えた。 

ルームシェアジャパン - ルームメイト募集掲示板 

 

2004年12月『ゲストハウスに住もう!?TOKYO非定住生活』が出版される。

ゲストハウスに住もう!?TOKYO非定住生活

ゲストハウスに住もう!?TOKYO非定住生活

 

帯のコピー。「さらば、がんじがらめの日々。敷金・礼金、仲介料ゼロ。仲間つき。ゲストハウスは、自分らしい生き方をもとめ、首都圏を転々とする行動派の強い味方だ。夢をかなえたい人も、自活したい人も、引きこもりを卒業したい人も、全員集合!」

首都圏のゲストハウスは、旅人の溜まり場というよりも、経済的な理由や事情のある人たちに便利な受け皿となっていたことが本書から分る。

日本でのゲストハウスの前身は、「日本になるだけ安く滞在したくても連帯保証人をつけれないためにふつうの賃貸物件に入れなかった外国人を迎え入れるための物件だった」ということだ。

巻末にゲストハウス業者座談会が収録されている。この座談会登場のゲストハウス業者のリスト。現在も活況のようである。 

シェアハウス・ゲストハウスのオークハウス

オシャレオモシロフドウサン  ひつじ不動産

東京のシェアハウス・ゲストハウスなら女性も多くて安心インターワオ!

シェアハウス・ゲストハウスの物件探しを東京を中心にサポート-ゲストハウスバンク


2007年1月ドキュメンタリー『ネットカフェ難民 漂流する貧困者たち』が放送される。ネカフェに泊るお金がなくなるとマック難民となった。マクドナルドという名のゲストハウス。


2007年2月『東京ゲストハウスLife』が出版される。 

東京ゲストハウスLife―270軒以上の路線別物件ガイド付き!!

東京ゲストハウスLife―270軒以上の路線別物件ガイド付き!!

 

 本邦初の東京のゲストハウスガイド。居住形態の新たな選択肢として一般化した。大半が「居住型」で1カ月以上の在住を前提にしているとある。東京のゲストハウスが、沖縄のゲストハウスのような宿泊型ではなかったことが、シェアハウスという言葉が生まれた背景にあるのかもしれない。ゲストハウスやルームシェアが、シェアハウスのプロトタイプだったとは言えそうだ。

 

2007年2月、土曜ドラマ『ハゲタカ』が放送される。失われた10年(1993年~2002年)後、不良債権処理に暗躍するファンドとお金に変えられていく日本を描く。

2007年7月、エンジニアやクリエイターを対象にしたギークハウスが出来る。

ギークハウスプロジェクト 

ギークハウスプロジェクト - Wikipedia

 

4. 社会問題と311とメディアが生みだしたもの

2008年4月ドラマ『ラスト・フレンズ』が放映される。

ラスト・フレンズ - フジテレビ

ラスト・フレンズ - Wikipedia

シェアハウスという言葉は、ネットの記事によれば、一部の業者が、通常のゲストハウスと差別化するために使うようになったシェアハウスが、このドラマの影響でひろまったとされる。

昨今、社会問題化しているDVやセックス恐怖症、性同一性障害などのさまざまな問題を真正面から捉えた作品。様々な悩みを抱えた者たちが、温もりを求めてシェアハウスに集まり、他者との共同生活を通して、人と人との関わりの難しさと大切さを学ぶことで悩みを乗り越え、自分らしく前向きに日々を懸命に生きていく姿をリアルに描く青春世代の人間模様が描かれている。(wiki)

このドラマの登場人物はアジアの旅人やワーキングプアとは違っている。『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』には、このドラマにより「日本でもシェアハウスという環境で、他人と関わり悩みをぶつけあいながら成長する姿が描かれることで、シェアハウス自体へのポジティブなイメージが醸成されていった」と書かれている。

本来ネガティブだったものがポジティブに捉え直されるというコペルニクス的転回があったようだ。2008年前半は、日本人の精神構造はまだポジティブだったのかもしれない。

 

2008年9月 リーマンショック 金融システムの破綻。

2008年12月末、日比谷公園に年越し派遣村が開設される。この年、派遣切りとか貧困とかが喧伝された。
2009年9月、民主党への政権交代。
2009年、ノマドという新しい働き方が模索される。

 

2009年11月『他人と暮らす若者たち』が出版される。 

他人と暮らす若者たち (集英社新書)

他人と暮らす若者たち (集英社新書)

 

 プレカリアート(失業者、非正規雇用、ニート、ホームレス)の住処の選択肢としてのルームシェア、シェアハウジング。現実問題として、他人と暮らすことの難しさと問題点に向きあった内容。この書物には、シェアハウスという言葉は登場していない。プレカリアートという社会変革を迫るような造語も、あまり聞くことはないので定着しなかったのだろうか。

 

2011年3月11日 東日本大震災

震災後、若い世代のあいだに、絆を求める傾向が生まれ、シェアハウスの人気に拍車をかけているという主旨の記事があった。

震災を乗り越えた不動産市場、「絆」求めて人気のシェアハウス|日経不動産マーケット情報

また、違う記事では「つながり願望」という新しい風が吹き始めたという指摘がある。

戦後、核家族化や個人主義が進み、家族や社会との「つながり」が弱まっていましたが、震災を契機に家族や地域との「つながり」が見直されるようになったことに注目したいと思います。最近若年層を中心にシェアハウスが人気を集めていますが、これも「つながり願望」といえるでしょう。家族、人と人、人と地域の関係に今、新しい風が吹き始めたと感じています。(東日本大震災による住意識の変化」調査について)

「東日本大震災による住意識の変化」調査について | プレスリリース一覧 | セキスイハイム

 以前からあったルームシェア志向、不動産業界・賃貸住宅市場のマーケティング、震災などの影響により、プレカリアートだけでなく、絆のある新しいライフスタイルを求める人たちも、シェアハウスを居住の選択肢として認識したようだ。

 

2011年10月ドラマ『私が恋愛できない理由』が放送される。女子四人によるルームシェア生活。これもフジテレビ。シェアハウスがよほど好きなんだろう。

私が恋愛できない理由 - フジテレビ

 

2012年2月『大人のためのシェアハウス案内』が出版される。 

大人のためのシェアハウス案内

大人のためのシェアハウス案内

 

 本邦初のシェアハウス入門書とある。新たなライフスタイルやコミュニティを求めてのシェアハウス。これまでは、どちらかというと若い世代に向けて、シェアハウスが発信されてきたが、これは、タイトルにもあるように大人向けの内容。「つながり願望」は大人にも拡大した。


2012年9月映画『シェアハウス』が放映される。 

シェアハウス [DVD]

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 「海のそばでシェアハウス(共同生活)を始めた、世代の違う女性4人の人生再生の物語」大人版女子四人によるルームシェア生活。「つながり願望」拡大中。

 

2012年11月『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』が出版される。 

シェアハウス わたしたちが他人と住む理由

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  • 作者: 阿部珠恵,茂原奈央美
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
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 シェア生活をしている著者2名によるレポート。テラスハウスの開始時と同時期の出版。経済的な選択肢ではなく、純粋に新しいライフスタイルと都市のコミュニティと絆を求める著者。品行方正な匂いが漂う。テラスハウスが受け入れられる土壌は醸成される。

 

2012年12月、政権交代。第2次安倍内閣

2013年2月『シェアハウスで暮らす』が出版される。 

シェアハウスで暮らす: シェア生活の良いところも悪いところもぜんぶ書きました!

シェアハウスで暮らす: シェア生活の良いところも悪いところもぜんぶ書きました!

 

 シェアハウス業者の出版した本。『テラスハウス』のライフスタイルを志向した本。ホームページを見るとこの本のイメージがだいたいの感じが分る。

シェアパーク監修 書籍「シェアハウスで暮らす」

この業者の扱う物件でフィットネススタジオ付きのシェアハウスもあり、テラスハウス的な驚きのプロモ動画が見れた。

 フィットネススタジオ付きシェアハウス「凛 omori」

 

5. 輝かしい青春の舞台と拡がりゆく影

2012年10月から2014年10月まで『テラスハウス』が放映される。


テラスハウス - フジテレビ

テラスハウス (テレビ番組) - Wikipedia

2014年10月の終了時は、やらせとか何とか言われていたが、リアリティショーとうたっているように、明らかにショー番組である。シェアハウスのイメージを巷に大きく広げるのにひと役買った。

テイラー・スウィフトの曲をはじめとして選曲も全体的に良かった。「テラスハウス 選曲」で検索するとたくさんの記事が見つかる。男女間で取り交わされる感情とそれにマッチするBGM。少し痛い。ヒップホップだったら楽しんで見れたかもしれない。Youtubeでテラスハウスの公式全動画が見れる。

テラスハウス全動画

テラスハウス Terrace House Full - YouTube

テラスハウスダイジェスト

テラスハウス - YouTube


番組のエンディングで、バタンとドアが閉まる。Snow Patrol「Chasing Cars」が流れる。薄いビールを飲みながらこの動画を見ている。いつ見ても甘酸っぱく痛々しく感じるのは、あるべきはずの青春が理想的に表現されているかも知れない。


このテラスハウスは実像なのか虚像なのか、本気でそう思った人もいる。虚像と分かってるが、本当にあるのではないか。実際に確かめた人もいるようだ。「共同生活で“テラスハウス的”リア充生活は可能か!?」という記事。老舗のシブハウスでのシェアハウス一日体験記。

共同生活で“テラスハウス的”リア充生活は可能か!? | CHINTAI情報局

シブハウスについては2011年10月のSPAの記事がある。SPAらしいキャッチーな見出し。

渋谷で家賃3万円の快適シェアハウス ルールは「陰口禁止」「避妊」「法律遵守」だけ!? | 日刊SPA!

 

シブハウスも、テラスハウスほどお洒落ではなかったようだ。どちらかというとゲストハウスの雰囲気に近いようにも見える。
昔、テレビで鹿賀丈史ヴァージョンの『家族ゲーム』が放映された。鹿賀丈史が沼田家の男子から、昔のことを聞かれ「やだなあ、ぼくにそんな輝かしい青春があるわけないじゃないか」みたいなことを答える。そのシーンを思い出した。多くの人に、テラスハウスのような輝かしい青春なんてあるはずもない。


しかし、フィットネススタジオ付きのシェアハウスがあるように、テラスハウス的なシェアハウスも、良く探せばあるのだろう。テラスハウスを探す旅は、シェアの概念を発展させるサマー・オブ・ラブのようなムーブメントのきっかけになるかもしれない。

2015年2月には『テラスハウス』の映画版も公開される。大切な人と一緒に見よう(とコピーに書いてある)。ひとりで見るのは恥ずかしいので、必然的に誰かを誘うことになるのだろう。そういうきっかけをつくる映画かもしれない。

[映画]テラスハウス クロージング・ドア 

 使われる音楽も変わることはない。予告には「バイバイ、テラスハウス」と書いてあった。アンチも寂しくなるだろう。

We Are Never Ever Getting Back Together

We Are Never Ever Getting Back Together

 

 

シェアハウスの影 / 絆構築は可能か

シェアハウスを調べていると、「シェアハウス トラブル」で検索している人が多いことに気づいた。どうも光ばかりではないようだ。一番最初にまとめ記事がヒットする。

金銭問題、貸し借り、いじめ、恋愛、男女関係、盗聴、のぞき、騒音、におい(オイニー)、宗教、マルチ、脱法ハーブなどなど。これではカオスだ。青春のドリームが音をたてて崩れていく。セカオワハウスにも苦情が殺到してしまったようだ。騒ぐなという方が難しいだろう。

シェアハウスで本当にあったトラブル実例とは? - NAVER まとめ

 

『東京ゲスト・ハウス』では、一人の入居者で、シェアハウスの絆がぶち壊れた。実際に、ひとりのメンヘラの行動により、絆の崩壊に導かれたシェアハウスもあるようだ。性善説にまかせ、ノーコントロールで絆を維持するのは難しいだろう。多くのシェアハウス関連本が、共同生活のルールや仕組みを力説している。経済志向であろうと、ライフスタイル志向であろうと、絆志向であろうと、まずは居住空間をシェアするルールと作法を身につけることが要求されている。


シェアハウスの絆を壊滅的にぶち壊すのは、ネガティブな感情や不安定な精神である。そう思って、感情や精神のシェアについて書かれた本を探してみたが、うまく見つけることができなかった。メンタルヘルス全般の問題になるのだろう。感情のシェアとは共感のことだろうか。


シェアハウスに住む場合、共感や絆うんぬんよりも、他の居住者と仲良くなるのか、ならないのかをまず決める必要がある。なぜかというと、協調性がない性格に見えるのに、ゲストハウスを好む人もいたからである。ひとりを好む人も、多少は他人とつながりたい傾向があることが分る。逆に、本人は仲良くしたい、つながりたいと思っているのにうまくいかない場合もある。様々な人たちがシェアハウスには集まって来る。入居者が何らかのきっかけで、精神的に不安定になり、絆を破壊するリスク*1 がシェアハウスにはある。個人的には、様々な人たちが共生できる道を探すべきと思っている。

  

 6. シェアハウスが終の棲家となる日

ゲストハウスとかシェアハウスでは、住み続ける人たちがいずれ年を取った時にどうなるかも気になる。それはグループハウスのような形態になっていくのだろうか。また、そうした移行は可能だろうか。(以降、少し重い内容)

 

グループハウス(グループリビング)というのは、比較的健康な気のあった高齢者が少人数で暮らす家。似た言葉で、グループホームがあるが、それは介護を必要とする高齢者や認知症の高齢者が入居する施設こと。阪神淡路大震災後の1996年、旧厚生省は「グループリビング支援モデル事業」を提唱している。

グループリビングの草分け的存在とされるCOCO湘南のページ。旧厚生省が想定した水準の理想的なグループハウスが追求されている。入居負担金370万円。月額137000円(家賃・昼、夕食費・共益費・家事契約費)。 

特定非営利活動法人NPO COCO湘南 COCO湘南台、ありま、たかくらのご紹介

COCO湘南の参考記事

 

 2012年には、生活保護受給者は住まいが確保できないという問題があった。

進む高齢者の貧困~生活保護の課題~|特集まるごと|NHKニュース おはよう日本

 現在、生活保護受給でも入居可能なサービス付き高齢者向け住宅はある。ネットでもたくさん見つかる。

生活保護可能老人ホーム/高齢者住宅特集 [月額が安い順] | 介護DB

しかし、このまま生活保護受給者が増え続けると、財政上の大問題となる。


集まって住むのならば、高齢者シェアハウス以外にも、有料老人ホームや通常のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)がある。両方とも通常仕様で月額15万円~20万円程度ということだ。格差社会が進展した場合でなくても、これだけの費用を捻出できるだろうか。

ネットを見ていたら「老後資金は本当に3000万円も必要?」という記事があった。実際の老後資金の平均準備額は約600万円。44.8%が準備額0円だそうだ。この記事で気になった部分の引用。

2014年5月、政府の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)の有識者会議「選択する未来」委員会は「新生産年齢人口――70歳までを働く人、労働力と考える」を提言しました。60歳定年が65歳定年になり、近い将来70歳定年に(?)。定年退職は蜃気楼のように遠のき、否が応でも「生涯現役」になりそうな……。そのうち「老後資金」という言葉はなくなるのかも知れません。

老後資金は本当に3000万円も必要?(あるじゃん(All About マネー)) 

 

生産年齢人口は、財政状況に合せて、70歳、75歳、80歳とのびていくのだろうか。70歳というのは充分にありそうだ。充分な老後資金があれば、労働力にならなくても良いし、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも入れるだろう。しかし、老後資金がないとそれも難しい。死ぬまで働く時代も視野に入ってきた。

国は財源がないと繰り返し言う。NHKは、2010年『無縁社会』で孤独死問題を取り上げたり、今年は『老人漂流社会"老後破産"の現実』などと警笛を鳴らした。お金がない高齢者はこれから増えるので、死ぬまで働くという選択肢だけでなく、コストがかからない老後の在り方をスタディする必要がある。無縁社会や孤立死の対策は一般的な課題として考えられているのだろうか。


「高齢社会 シェアハウス」で検索すると、高齢者が集まるシェアハウスの記事が見つかった。

老後に不安抱える高齢者集まる大阪シェアハウスの取り組み(社会) - 女性自身

 

他にも、日本シェアハウス協会が開発した「多世代共生型シェアハウス」の記事があった。「若者が中心のシェアハウスにシニアが入居し、若者と様々な交流が出来るシェアハウス」だそうである。多世代共生型シェアハウス、実際に、リベストハウス吉祥寺という事例があるようである。

多世代共生型シェアハウス「リベストハウス吉祥寺」

吉祥寺のシェアハウス「リベストハウス吉祥寺」

日本シェアハウス協会、超高齢社会に向けシェアハウス新モデルを開発 | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト

 この試みは評価されると思う。ただ、一般論として、充分に企画を練らずに、建築家とか設計士が建物をかちっと設計してしまうと、良くある建物となり、従来の生活イメージを越えれないような気がする。高齢者シェアハウスは、充分に練った企画かフジテレビによるドラマ化が期待される分野だ。高齢者シェアハウスのドラマ。

このシェアハウス協会は、空建物をシェアハウスに改修するシェアハウス化事業も提唱している。

日本シェアハウス協会 | 新たな「共生型住まい」を推進する

 

多世代共生型シェアハウス「リベストハウス吉祥寺」の家賃は約6万円。食費や光熱費は別である。食費や光熱費こみの事例はあるだろうか。

月額10万円で生活できる高齢者の為の賃貸共同住宅のページがあった。家賃、管理費、1日3食の食費、光熱費を含めて月額10万円。訪問介護サービス、365日24時間の見守りも併せてご提供。ホームページには、シェアハウスと書いてある。現在満室のようだ。

高齢者シェアハウス 楽10ライフ 月額10万円で生活できる高齢者向きサービス付き賃貸住宅


高齢者シェアハウスのまとめ記事。高齢化社会の切実感からか、かなり熱心にまとめられている。

【人気】高齢者シェアハウスのススメ【割安】【問題点】 - NAVER まとめ

  

その他高齢者の住まいに関する記事。朝日も高齢者シェアハウスに関心を寄せる。

低価格の「サ高住」が人気 契約前に確認すべき点とは? 〈週刊朝日〉

「有料老人ホーム」と「サ高住」 選ぶならどっち? 〈週刊朝日〉

若者じゃないけどシェアハウス 空き部屋活用の利点も 〈週刊朝日〉

高齢者シェアハウス メリットはお年寄りの○○の解消 〈週刊朝日〉

 

今後、格差社会が進展すれば、月額10万円というのも贅沢な話になるかもしれない。シェアハウスも最安値で月額3万円ぐらいからある。国民年金が機能していることを前提として、家賃、管理費、食費、光熱費コミで、月6万円程度の高齢者シェアハウスがつくれれば超格差社会に対応できるのではないか。ゲストハウス、シェアハウスが低コストで運営できるのだから、高齢者シェアハウスもプラスアルファ分くらいで運営できるのではないだろうか。

与党が「この道しかない」と言うように、政策は成功を前提としている。経済成長が格差をカバーできず、格差が進展した場合の老後設計は、パンドラの箱なのかもしれない。その場合、ランニングコストは限られるので、高齢者シェアハウスは、イニシャルコストの限界に挑戦する必要がある。空き家が増え続けているのでイニシャル面では期待できると思っていたら、空家対策で税制強化が検討されているというニュースがあった。

空き家対策 課税強化で調整へ NHKニュース

対策されても構造的に空き家は増え続けるであろうから、成長戦略がうまくいかなかった場合の保険として、高齢者シェアハウス村みたいなものを実験的につくってはどうだろうか。(イメージ的にはヘイトアシュベリーのような)

 

7. テイラー・スウィフトが流れる高齢者シェアハウスは可能か 

ゲストハウスから高齢者シェアハウスまで、興味のおもむくまま、かなりラフに調べてみた。コミュニティでのネガティブな感情やメンタルヘルスの問題など、取り扱いが難しい領域もあった。

最新の「日本の世帯数の将来推計」では、単独世帯が2025年にすべての都道府県で最多になると推計されている。

『日本の世帯数の将来推計』(2014年4月推計)|国立社会保障・人口問題研究所

 

格差社会が進展した後の超高齢化社会が想定されていなければ、幾分かの制度設計はされても、お金を持たないものは、後回しにされ切り捨てられるのは目に見えている。だから、いずれ考えなくてはならない問題として、比較的、低コストで生活できそうなゲストハウスやシェアハウスの発展形としての、高齢者シェアハウスが可能かイメージしておきたいと思った。

普通に働いて、普通に暮らしていれば、普通の老後がおくれるというのが、国としては望ましい在り方だ。NHKスペシャルで取材を受けた人たちはどうみても普通に生活してきた人々である。今後、普通に働いて、暮らしていても、普通の老後がおくれない人の割合が増えるだろう。そうした割合を減らすためにも、コスト的に可能性のある住まいであるゲストハウスやシェアハウスといった共有的空間の展開が有効ではないだろうか。

最近のコミュティデザインは、つながろうとする人たちの善意を前提に、様々な課題を解決してくれそうである。しかし、無条件に性善説を前提にすることもできない。ネガティブな感情が、一瞬で、ソーシャルやコミュニティを崩壊に導くこともあると思う。次々と登場する現代的な劣化した感情で壊れないコミュニティが主題化され、研究される必要がある。コストと性悪説をクリアーし、ネガティブな要素でこわれない靭性の高い共有的空間をデザインできれば、ゲストハウス、シェアハウスの発展的形態としての高齢者シェアハウスは可能になるだろう。

 

シェアハウスの利点は、集まって住むことの格安性と多少のつながりを持った生活ができることである。経済性や災害時の課題に応える住居形態でもある。格差社会の進展、高齢化社会の進展にあわせて、高齢者シェアハウスを展開させる必要があると思う。
国が主導するのか、民間が主導するのか、個人がやるのか、誰もやらないのか、まだはっきりと見えない。いずれ、こうした議論も盛んになるだろうか。その場合、死を待つための単なる箱を量産するのではなく、ゲストハウスやシェアハウスといったイメージの延長の方がいい。できれば、テイラー・スウィフトが流れるような明るい空間であって欲しいと思う。 

 

1989 (13 Tracks Standard - Slipcase & Photos)

1989 (13 Tracks Standard - Slipcase & Photos)

 

 

関連記事  

archipelago.mayuhama.com

 

archipelago.mayuhama.com

 

*1:流動する社会と「シェア」志向の諸相」という記事では、自発的な個人ベースのシェアハウスが必ずしもうまくいっている訳ではないことが指摘されている。自発的なシェアハウスがうまくいかない理由として、”当初、純粋な公共財に近づける方向で「来る者拒まずにしよう」「会員制にする場合も事前審査はやめて定員になるまでは申し込んだ順に入居させよう」としたところが、メンヘラが来たり、他人と暮らすことが難しい性格の連中が来たり、性愛トラブルメイカーが来たり、といったことがありました”という指摘や  ”「シェア」が目立つようになったのは5年ほど前からでしょうか。その頃の夢あふれる感じは、シェアハウスの創立に関わった人々から失われて、人の善意を信頼するだけじゃダメという認識が拡がりました”ということが指摘されている。