エッセイストの能町みね子さんが、8月4日放送の日本テレビ系「今夜くらべてみました」で「オネエ」と分類され、抗議している件がニュースになっていました。
関係者のツイートやブログがニュースになっている訳ですが、マイノリティ内の差別と区別をめぐる誤解があるのではないかと思いました。大事なことが話し合われていると思いましたので、混乱の原因を検証しつつ、経緯を振り返ってみました。
私はオネエではありませんので日テレの人は訂正してください。
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 4
8月4日のテレビ番組で「オネエ」とくくられたことに対する能町さんのツイートが記事になりました。
日テレに「私はオネエではありません」 「ヨルタモリ」能町みね子さんが激怒 (J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース
能町みね子さん、「オネエ」紹介に訂正要求も日テレから「謝罪の言葉ない」 (RBB TODAY) - Yahoo!ニュース
差別と区別をめぐる誤解
数日して、8月14日にはヤフーニュースになりました。
現在「ヨルタモリ」に常連客として出演していますので知名度からヤフトピにもなるのでしょう。
能町みね子さん「私はオネエじゃない」日テレに抗議 (日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
この記事に対して能町さんはツイートしました。このヤフトピタイトルが「能町みね子さん オネエは差別」となっていました。
ヤフトピで「オネエは差別」って略されちゃってんのね…それは誤解されるし全方位的に叩かれるだろうな…キツいな
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 14
まあヤフトピタイトルにされた「オネエは差別」という言葉だけ見たら、オネエと言われて活躍してる人が不本意な気持ちになるだろうってことは予測できた。嫌な予感はしてた。
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 14
元記事のヤフトピタイトルは、能町さんのインタビュー内容を受けたものになっています。
オネエという表現は、差別に受け取れます。割り切ってオネエを受け入れて仕事されている方もいらっしゃいますが、私は違います。ひとくくりにしてほしくありません
こうした一連のニュースを聞いたクリス松村さんがブログで意見をしました。
マイノリティがマイノリティを傷つけるという哀しさ・・・。
私は、ここしばらくかなり真剣に考えています。
いわゆる「おネエ業界」が成熟した先の結果を。
今、また新たな差別が始まったと感じています。
同じ悩みを抱えているはずなのに・・・。
最近のお若い方々は、もう少し、それぞれの歴史を尊重すべきだと思います。
新たな差別|クリス松村オフィシャルブログ Powered by Ameba
松村さんのブログは記事にもなりました。
クリス松村、“オネエ”表現に抗議の能町さんに苦言「新たな差別が始まった」 (RBB TODAY) - Yahoo!ニュース
クリス松村、能町さんの「オネエ抗議発言」を「批判」 「マイノリティがマイノリティを傷つける新たな差別」 (J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース
このクリス松村さんのブログに対して能町さんはツイートしました。
クリス松村さんの発言については、ブログを読んでもよく真意が分かりません。私は別にほかのゲイの方々とか、セクシャルマイノリティを否定するような発言はしていないんですが…
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 14
クリス松村さんが問題にしているのは、ヤフーニュースでの「オネエという表現は、差別に受け取れます」以下の発言だろうと推測されます。松村さんは「オネエ」という表現にも先人達がつくりあげてきた歴史があるんだということをブログで書いています。
問題はこの部分にフォーカスしてしまっていることだと思うんですが、能町さんがもともとツイッターでツイートしていたのは、十把一絡げのくくり方は差別的であり、私は「オネエ」じゃないのでしっかり区別してくださいと言ってるだけだと思うんです。
そこをヤフトピは鋭い嗅覚で「オネエは差別」かどうかという問題にフォーカスしたんですね。オネエは差別表現だからやめろというように理解した人もいたかもしれません。
能町みね子さんの当初のツイートを見て見ましょう。
能町さんのツイート
ざっくりホモとかオカマとかオネエとかに分けることによって植えつけられる偏見とか先入観とかをぶち壊したいと思ってやってますんで、絶対に許しません。
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 4
ざっくりとしたレッテル貼りには差別がありますよということです。オネエという表現ではなく、そこに差別があればぶち壊したいと言っています。
日本人だったり東京都民だったり女性だったり自営業だったりいろいろ属性があります。オネエって逆に何ですか? RT @Shizzmm: おネエじゃないとしたら、何なんですか?(´・ω・`)(なんも知識ない上で書いて申し訳ないですけど)
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 6
じゃあ何ですかと聞かれて、自分についての説明です。
まず捨てアカやめてください。自分のアカウントで言う勇気はないですか?繰り返しですけど、私は自分がオネエだと思っていないので、オネエというくくりを好まないのは当然ですよね…。同様にゲイというくくりも好みません。ゲイじゃないと思ってるから。 RT @mm_purin___
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 7
自分がオネエじゃないのに違うラベルを貼るのは変じゃないかという話です。
私が持っているのはオネエに対する偏見ではなくて、「オネエ」という雑なくくり方そのものについての嫌悪感です @mm_purin___
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 7
これも偏見(差別)ではなくて、雑なくくり方が差別的だろうという話をしています。
勘違いしてる人は私のツイッターなんか見ないと思うけど…何回も補足してるとおり、「オカマはよくてオネエはダメ」とか「オネエと一緒くたにするな」とかいう話じゃなく、「俺、デブです」って自分で言うのは勝手だけど他人を「あのデブの人」って呼ぶのは失礼すぎるだろって話です
— 真夏の夜の能町 (@nmcmnc) 2015, 8月 14
一貫して区別の話をしています。単純にAとBは違うのだから分けましょうという話です。
依然として横たわっている問題
能町さんがツイッターで言っていたのは区別の問題です。AとBは違うので区別しましょうという話で、AがBより優れているという話はしていません。また、AやBという表現に偏見や先入観があるのならばぶち壊したいということです。
が、オネエという表現は差別かどうかという問題にフォーカスしていってます。それは本質的には依然として差別構造がなくなっていないだからと思います。雑なくくり方は差別的であるということがやはり差別的表現だよということになり、一方では、歴史と愛着のある呼び方なんだからそれを差別というのは新たな差別ではないかという話。当事者同士の考え方の違いがあるだけなのではないかと個人的には思います。
両者にはこうした表現を差別のないニュートラルでフラットな受取り方にしたいという気持ちは共通しているでしょうから、現在の差別が残る社会観ベースではなく、世界標準のフラット社会を念頭において話しあうことができれば誤解も少なくなるのではないかと思いました。
うまく言葉にすることはできませんでしたが、一連のエントリーは、関連ツイートも含めて、マイノリティーがフリーダムを取り戻す行程として重要な問題認識であると思いました。
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相撲への造詣も深く、今年の初場所2日目のNHK大相撲中継にも出ていました。
【初場所】NHK、中継で「相撲女子」向け放送 : スポーツ : スポーツ報知
現在、ヨルタモリの出演のほかに、久保ミツロウさんとオールナイトニッポンをやっています。*1
久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポンGOLD Thursday P.M.10:00-A.M.0:00 | AM1242
- 作者: 久保ミツロウ,能町みね子,久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン
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*1: 久保ミツロウさんの『3.3.7ビョーシ!!』をリアルタイムで読んでいましたがそこには異様な感覚が表現されていました。あれは何だったんだろう?