烏丸通から蛸薬師に入り、新町のあたりを歩いていると、えっ、こんな所に、と思う場所にホテルが出来ていた。サインには、三井ガーデンホテル京都新町 別邸と書いてある。名前から漂う気合が香ばしい。低層部は町屋風、上階の客室部分はコンクリート打放し風仕上げという和・モダンな外観。町衆も納得の暖簾を入口にフィーチャーし、古都との調和をアピールした表構え。
京都では、ホテルのキャパは不足気味であるし、京都という国際観光都市にマッチしたホテルの在り方が模索されている。このホテルのある場所は、古い町屋も多いが、近くにオフィスも建ち並ぶ街中である。だから、鴨川のほとりにあるリッツ・カールトンのように、名所史跡とのシームレスな連続性は期待できない。ただ、祇園祭の時には、鉾が間近にあったり、その雰囲気一杯に満たされる場所なので、なるほどという感じはする。
昔、三井ガーデンにしかとまらないおじさんがいた。みんなが違うホテルに泊まっても、「 ぼくは、三井ガーデンに予約してくれ」とか「えっ、そこには、三井ガーデンはないの?」 とか。この町には、そないなもん、ありまへん。普段は知的な感じのするおじさんであったが、わがままとも思える三井ガーデンホテルへのこだわりは、どうしても、知的な態度とは思えなかった。当時は。おじさん、京都にも、三井ガーデンが出来ましたよ。
ひらひらと風に揺れる暖簾をくぐり、少し中を覗いてみた。ロビーに面して坪庭がある。坪庭を印象的に見せるため、照明は少し暗めである。床はダークな石貼り、ゆらゆらと坪庭の柔らかな光を映している。聞くと、この3月に出来たそうだ。
確かに、町屋を現代風にホテルにしたら、こんな感じかも知れない。良く出来ていると思った。しかし、熱心なリピーターになるほどの理由を見つけることはできなかった。あえて言うなら、フロントのレベルが高い。理由はこれか。やはり、泊まってみないと本当の理由は分からない。
ウェブサイトでも、ホテルコンセプトなるものを説明している。知識としては、ためになる 。しかし、このホテルブランドの何たるかは、語られることはないだろう。ホテルは、エクスペリエンスなのだから。