ジンベイザメが泳ぐ黒潮の海
美ら海水族館が、凄い凄いというので今更ながら行ってみた。
クライマックスの水槽の一枚もののパネルの大きさが凄い。幅が22.5m、高さが8.2mあり、アクリルガラスの大きさに到っては、水圧に耐えるために60cmの厚さがあるという。竣工当時は世界最大の大きさだったという。今でもそうかも知れない。
美ら海水族館の設計は別の記事で書いた桜坂ホテルと同じ設計事務所の国建である。通常この大きさだとアクリルガラスのつなぎ目に柱やフレームが必要である。それでは価値がないということで、メーカーと力を合わせ、事例のない大きさのアクリルガラスの現場溶接にチャレンジしたということが国建のホームページに書かれていた。
あのアクリルガラスが一枚ものでなかったら、これほどの人気にはならなかったような気もする。確かに国建は沖縄を代表する設計事務所である。
20年位前にモアルボアルというセブの田舎でダイビングをした。何日目かに、ジンベイザメが出たという噂が島中に駆け巡った。何時間もたたないうちにヘリコプターやクルーザーがその辺鄙な田舎にワラワラと集まった。地元のガイドに聞いてみると、お金持ちのダイバーがジンベイザメの近くに降ろしてもらい、ジンベイザメと一緒に泳ぐということだ。ジンベイザメがどこかに行ってしまうと、ヘリもクルーザーも、ここには用はないとばかりに一瞬で消えた。
その時以来、ジンベイザメを見ることは、お金持ちの酔狂というイメージが私の頭の中で出来上がった。しかし、美ら海水族館でジンベイザメが悠然と泳ぐ姿を見た時、ああこういうことかと、お金持ちがお金持ちなりに追求していたイメージが素直に理解出来た。ちなみにモアルボアル付近では現在、ジンベイザメを餌付けしていて一緒に泳ぐことが出来るらしい。
美ら海水族館の人気には色々な要因がある。しかし、根源的な秘密はお金持ちでしか到達し得なかったイメージが、目の前に拡がっているということを、見た人は直感的に感じとっているのではないかと思う。つまり、見れないものを見ているということを誰もが神経レベルで感じとっている。