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アーキペラゴを探して

archipelago - 群島、島嶼、多島海、そのニュース。 脱領域への考察と情報

あの日、猫が言いたかったこと

今週のお題「飼ってる、飼ってた、飼ってみたい!」

Nora Neko

 

ひとの気持ちはよくわからない。ひとの気持がわかってもなるほどと思うことは少ないし、的確な言葉にすることも難しい。動物の気持ちがわかるときがある。動物の気持ちがわかったときはなるほどと思い、正確な言葉に変換できる。変だ。ただ、かれらの伝え方には野性的なところがあると言わざるを得ない。とくにのら猫の場合にはーー


 

ひどく雨が降っているので、のら猫を家にあげた。足が泥で汚れているので拭かなくてはならない。ぼくは床に両膝をつき中腰になった。熱いおなかの張りを感じなから、のら猫を両手でたぐり寄せ、太もものうえであおむけにひっくり返した。脇の下から左手で胴体を素早くホールドして逃げれないようにした。ふわとした腹の毛が押さえた部分だけへこむ。

のら猫はいつも通り両手両足をだらんとさせた。ふきんでまず左手のうらをぷにぷにと拭き、右手のうらをぷにぷにと拭いた。猫は目を閉じて観念したように両手ぶらり両足ぶらりでじっとしている。のびたカエルみたいだ。次に左足のうらをぷにぷにと拭き、右足のうらをぷにぷにと拭いた。

猫の手足はにっきゅうというのかなんというのかぷにぷにしていてどうしても拭いた感じがしない。そうした気分が頭をよぎり、念のため、右足のうらをもう一回ふこうとした。その瞬間、猫は反対側の足でぼくの指先をバシッと蹴りはたいた。

なにが起こったのか。ぼくは驚いて猫の顔をのぞきこんだ。猫は目をつぶったまま何も語らない。実際、雨が降ったからといって、猫の手足のうらはそれほど汚れてはいなかった。もしかしたらにっきゅうが水をはじくよう構造になっているのかもしれない。それともどこかでふいてきたのか。

ふくのは一回で充分。そう言いたい猫の気持ちがよくわかった。のら猫はもういいだろとばかりに身をよじり、ぼくの太ももをふみにじるように床におりた。

本当に分かったのとぼくに一瞥をくれ、部屋の奥にゆっくり歩いていった。軽くジャンプしてソファにあがり、置いてあったコートのうえでまるまった。猫の足あとがフローリングに点々とついているようにも見えた。ぼくは猫にけられたショックが意外と大きくてその場で膝をついたまま動けずにいた。


 

数えきれないぐらいの猫をかった。猫にけられたのは後にも先にもこの一回。猫の気持ちがよく分っている方だとは思っている。一応。数えきれないぐらいの猫が天国へ旅立った。猫の寿命はひとよりだいぶ短いので。かれらはこの不等式を語ることはないだろう。けれども、あの日のように、もう充分だよって、きっと言うかな。

 

 

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