アーキペラゴを探して

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ミッキー・ローク的であるということ / 『シン・シティ 復讐の女神』

今週のお題「さむい」

エンディングが終わり、館内の照明が灯された。座っているのは、ぼくも含めて三人だけ。ほかの客はエンディングの音楽が鳴りはじめると、とっとと出て行ってしまった。さむい。この寒さを熱に変えなければならない――

 

 どう見るべきか『シン・シティ 復讐の女神』

後ろの席で、映画好きの中坊が、何やらひそひそ議論している。「脚本が悪いんじゃね」「監督のロドリゲス的には…」「エヴァ・グリーンのお色気ではひっぱりきれないよ*1」制作者になりかわって自主的な反省会。今回のシン・シティをどう評価するかについて意見が二つに割れている。


Frank Miller's Sin City: A Dame To Kill For -  Dimension Films - YouTube

 

仮に作品のクオリティは下がったとしても、シン・シティ特有の後味の悪さは共通している。朝方元気にウキウキしていた人も100%ブルーに悩ませる後味の悪さ。こうした力学をものともしない現役中学生たち。*2 そのタフな批評家精神と折れないメンタリティに日本の未来を見た。シン・シティ の続編がどうしてこうなったかは彼らにまかせよう。

ただ、シン・シティはオムニバス形式の作品であり、シン・シティはシン・シティなので、あまり期待せずに見るのがいいのだろう。一作目が出来すぎなのだ。シン・シティの世界観が好きであれば、やはり見るべきだと思う。ニ、三日続く後味の悪さを存分に味わって欲しい。 

 

シン・シティを見続ける理由

ぼくがこの映画を見る理由は、一作目をリアルタイムで見ていることと、何よりミッキー・ロークが出ているということだ。多くのミッキーフォロワーにとって、今回の作品はうれしいものがあった。どのエピソードにもミッキー・ローク演ずるマーヴが絡んでおり、全編に渡って見ることができる。難を言えば、マーグの特殊メーキャップはあまりにも厚盛りなので、元がミッキー・ロークであるか誰なんだか分からない点だ。

見終わってから、ヤフーのレビューを読んでいると、この映画はブルース・ウイルスの髪型を見に行く作品だという意見があった。ブルース・ウイルスは髪型で役を演じ分けているという訳だ。そもそもブルースには髪がないだろうという話もあるがこれがコアなフォロワーというものだ。つまり、映画のもうひとつの見方として、作品よりも役者を見に行くという見方。ぼくはそういう見方をした。三作目も期待したい。

 

 ミッキー・ローク同好会 スケテロな夜

ミッキー・ロークとは何か。この問いは現在も進行形だ。サントリー リザーブの一連のCMが印象的だった。そして、ボクサーとして猫パンチの一件があり、パンチ後遺症での整形失敗や芳しくないニュースが続いた。

本名はPhilip Andre Rourke Jr.。7歳の時両親が離婚。母、兄妹と共にマイアミに渡り、1年後に母が再婚。だが新しい生活環境になじめずボクシング・ジムに通い、暗い青春を送る。19歳で単身ニューヨークに渡り、こつこつと働きながらアクターズ・スタジオで演技を学び舞台に立つ。

ミッキー・ローク(Mickey Rourke) のプロフィール - allcinema

 

試合を見た往年のボクシングファンは語る。

「あのパンチは衝撃だったよ。なんたって、猫が繰り出すようなパンチで相手が倒れちまうんだからさ」「それより驚いたのはミッキーが履いてるパンツさ。なかみが分かるほどスケスケなんだぜ」*3

 

20年ぶりにミッキーフォロワー仲間のA君と会った。暑い夜だった。ミナミの隠れ家のようなBarで待ち合わせた。遅れてやってきたA君。座っているぼくの視線は、彼の胸元に釘付けになった。乳首が思いっきり透けていたのだ。いわゆるスケテロ感のあるTシャツ。街場の風俗をウオッチするものとして興味を持った。そして、A君はあいかわらずミッキーファンなんだなと嬉しくなった。ミッキー復活を祝して何回も乾杯した。そんな夏の夜。

実際、男がビーチク(=乳首)を透けさせるファッションは、雑誌LEONでも「乳(ニュー)リッチ」として特集された。編集者がミッキーファンであることは容易に想像できる。これもシン(=罪)・シティのエピソードと言えるだろう。虚構の話をしている気分になってくるが本当にあった話である。*4

  

ミッキー・ローク的であるということ

1900年代のミッキーと2000年代のミッキーは外見的にはまるで別人だ。いま風の言い方をすると、2000年代はミッキー・ローク 2.0だ。

いや、そうではない。

外見は同じなんだけど、時間がたってすっかり変わってしまっている人間がいる。その反対に、外見はすっかり変わっているんだけども、何かその人らしさが残っている場合がある。

それとも、微妙に違う。

昨年末、ミッキーは年甲斐もなくボクシングの試合で勝利した。ミッキーには、ニ世紀を通していつもミッキー・ローク的なものを感じる。 


62歳の米俳優ミッキー・ローク、ボクシング復帰戦で勝利 写真13枚 国際ニュース:AFPBB News

 試合前の記者会見の様子(最新のミッキーが確認できる)

Mickey Rourke attended a press conference about his return to boxing in Moscow, 25.11.2014 - YouRepeat

 

『復讐の女神』を見終わってミッキー・ロークはあいかわらず生きていると思った。ステインアライブ。その想いがちからをくれる。*5

浴び続けたパンチで外見はメタメタになり、普通はダウンしたりダメになるだろうという状況でも、絶えず生命の熱量をみせつづける。さむいをあついに変えるミッキーマジック。ぶっこわれたままでもフルスロットルで走り続ける。見た目が9割なんて、まったくの嘘だということは、ミッキーファンなら誰でも知っている。

ミッキー・ローク的であるということ。見たことのない生き方の構造があるんだろうと思う。そのディオニソス的物語の現在進行形を見ている。

 

ラフに選ぶミッキー・ローク出演作

ミッキー・ロークの出演する映画は言及されることが少ないといつも思う。ミッキー・ロークとは何かを考えるにあたって、最低限見ておきたい映画をリストアップしてみた。ミッキーがおそらくそうするであろうように、思いついた作品をラフに選んでみた。作品としておすすめ。

 

1.エンゼル・ハート(1987) 

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 サイコスリラーの超傑作。悪魔とブードゥーの儀式が衝撃だった。おそれおののくミッキー。一番アブラの乗り切ったミッキーが見れる。監督は『ミシシッピー・バーニング』(1988年)のアラン・パーカー。

 

2. イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(1985)

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 旬のミッキー・ロークが見れる。チャイニーズ・マフィア演じるジョン・ローンも際立っている。あごを突き出し深めに帽子を被るミッキーがかっこいい。監督は『ディア・ハンター』(1978)のマイケル・チミノ。


3.ナインハーフ(1986)

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 女子人気の高かった映画。プレイの映画。内容よりもブライアン・フェリーの「Slave To Love」などサントラが良かった。

 

4.レスラー(2008)

レスラー [DVD]

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代表作。ムキムキのミッキー。ミッキーの不器用さが表現されている。インタビューでは配給元さえ見つけれるかどうか分らなかったという。

せいぜい1年か1年半かそこらで変われると思ったんだけど、10年以上かかったね。5〜6年ボクシングをやって、役者に戻ったけど、8年間ほど仕事がほとんどもらえなかった。それはオレ自身の態度が災いしていたということは100%認めるよ。(中略)  今、このポジションにいるってことを、本当にラッキーだと思うんだ。14年間という余りにも長い期間なんで、よくわからなくなってて、12年とか13年とか言ったりもするんだけど、実際は16年かもしれない(笑)。

インタビュー: 復活のミッキー・ロークが語る、「レスラー」 - 映画.com

 

5.シン・シティ(2005)

シン・シティ スタンダード・エディション [DVD]

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 完全復活の報にファンがむせび泣いた作品。とはいえ、映画を見ても、正直誰だか分からなかった。マーグは一作目で死んでしまうけれど、今作も前日譚として登場。配給元の狙いが当たったようだ。

 

*1:エヴァ・グリーンは『007 カジノ・ロワイヤル』のヴェスパー役で有名。次々と男を破滅させる悪女を演じている。ニーズがあるかどうか分からないお色気シーンが多いので、中坊はちゃんとマーケティングしたのかと疑問に思ったのであろう。

*2:R15映画だから中学生ではなく、高校生だったかも。しかしR15映画を外したときのショックはでかい。

*3:興味がある人は「ミッキー・ローク  猫パンチ」で検索すると、Youtubeで勇姿が見れる。猫パンチが何かと話題にされるが、スケパンの奇抜なデザインに注目して欲しい。勝利インタビューでいかに斬新かが分かる。目のやり場に困るパンツとも言える。

*4: LEON (レオン) 2006年 09月号を参照。表紙画像をクリックすると「乳リッチ」の見出しが確認できる。 

LEON (レオン) 2006年 09月号 [雑誌]

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*5:「その想いがちからをくれる」ドリカム 『眼鏡越しの空』にあるフレーズ。いい曲なんじゃないかと思う。