アーキペラゴを探して

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「言い訳」と「謝り」の真髄とは何かを考える

以前勤めていた会社は、言い訳のプロや謝りのプロで満ち溢れていた。

反発心から、言い訳のプロや謝りのプロには決してならないでおこうと誓ったものだ。しかし、1900年代ののんびりしたビジネス環境とは違って、弱肉強食の2000年代は、仕事を覚えるより前に、言い訳や謝りを覚える必要があるかも知れない。 

 ある若者がミスをした。その若者を仮にS君としよう。そのS君を指導する立場ということで、何故かぼくが謝りに行かされた。言い訳や謝りは、最も苦手とするところで、かなり困ったなと思った。先方へ謝りに行く途中、駅のキオスクで、藁をも掴む思いで、参考となる本を、むんずと掴んだ。

『できる大人のモノの言い方大全』という本だった。ぶ厚い。荷物を持つのは嫌いだがこの際仕方ない。 

 

『できる大人のモノの言い方大全』で謝り例を丸暗記

 行きの電車で、謝りの部分を丸暗記し、先方に出向いた。部屋に入ると、先方の怒りはすでに頂点に達していた。丸暗記の有効性が低いことはすぐに直観できた。結論としては、ここに掲載されているフレーズは、あまりにも決まり文句なので、先方に額面通りの決まり文句として受け取られてしまい、効果は薄かった。平常モードのビジネス環境ではおおいに役立つ本であるが、極度に怒らせているような状況では、むしろ逆効果と言える。 

できる大人のモノの言い方大全

できる大人のモノの言い方大全

 

 

覚えたての謝りフレーズをアーケードゲームのミサイルのように先方に向けて、ぷしゅ、ぷしゅっとひたすら連打していたがそのうちにボロが出てしまった。

 

ぼく「とんだ失態を演じてしまいまして」
先方「うむ」

ぼく「お詫びの言葉もありません」
先方「うむ」

ぼく「誰にでも間違いはあることですから」
先方「?」

ぼく「どうかお気になさらないでください」
先方「!?

 

記憶力がいい方なので、ついでに謝りを受ける側の言葉も覚えてしまっていたのだ。ネタが尽きて、それがぼくの方から出てしまった。S君のしでかしたことなので、本音が出たのかもしれない。つまり当事者意識が薄かったという訳だ。

 

しかし、ぼくは少しも焦らなかった。こうした事態に備えて、実はもう一冊、参考書を買っていたのである。『どげせん』という土下座による謝りを武器とする先生のコミックである。第2巻がその時出たばかりで店頭に並んでいた。

  

『どげせん』の謝りの最高峰を実行する 

 この漫画の中で、どうしても許してくれない相手に、主人公が雪の中で、土下座し続けるという「雪中土下達磨(せっちゅうどげだるま)」という謝り方が印象的だった。 

どげせん 2 (ニチブンコミックス)

どげせん 2 (ニチブンコミックス)

 

 

  しょうがない。土下座か。試しに土下座っぽいことをしてみるか。

いざ、土下座をしようとしてみると、どういう訳か体が言うことをきかない。半沢直樹に土下座を迫られて、しゃっちょこばる大和田常務のように、どうしても土下座をすることはできなかった。向こうもこちらの必至な様子に何かを察したのか、「もういいですよ」と許してくれた。客先で、謝りに来た人間が大和田常務のように、ふぬっ、ふぬっと、歌舞伎役者のような顔をしてひきつっていれば、直ちに引き取って貰いたいところだろう。今気づいたが、そういう意味では、大和田常務の土下座もかなり効果が高い。

この伝説の土下座はもう一度確認してみたいところだ。  

半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX(通帳型メモ帳付き)(初回限定生産)

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ちなみに、『どげせん』の漫画の作者 板垣恵介氏は、謝りという同じテーマで、『謝男』という漫画を書いている。謝りはバキやオーガととともに極めておきたいテーマと推測される。 

謝男 1

謝男 1

 

 『どげせん』や『謝男』にインスパイアされたような『謝罪の王様』という映画もあったので、クリエイターの間では"怒髪天を鷲掴みする魔性"の謝り力が追い求められているのかも知れない。

 

 前フリが長くなってしまった。ぼくも折に触れて、この謝りのテーマを科学している。これまでの研究成果では、最も謝り力が高いと思ったのは『プレジデント』に掲載されていた内容と今のところ考えている。コンビニで売っている雑誌である。灯台もと暗しであった。板垣氏の描く謝りは、技とか芸に達するレベルの謝りの奥義なので、鑑賞すべき対象なのである。「雪中土下達磨」は覚えておかなくても良いかもしれないが、『プレジデント』の謝り技は覚えておきたい。

 

『プレジデント』の謝りの真髄を心に刻む

  

三流 → 適当な言い訳で責任逃れ

   「いま責任者が不在で・・・」


一流 → まず顧客の不快感を受けとめる

   「ご不快に思われたことお詫びします」

 

『PRESIDENT』 2014年 5/5号(プレジデント社、66ページ)

  

PRESIDENT (プレジデント) 2014年 5/5号 [雑誌]

PRESIDENT (プレジデント) 2014年 5/5号 [雑誌]

 

 

「まず顧客の不快感を受けとめる」のである。

極意は相手の心中を察するのである。これは色々なところで、応用が効く謝り方である。浮気がばれた旦那、二股がばれたビッチにも、万能の謝り方である。「ほんと、A子(A男)には、○○させてしまったと思う・・・」と、相手の心中を察するフリをする。○○には、「傷つけてしまった」とか、「悲しい思いをさせてしまった」とか、「苦しい思いをさせてしまった」とかを入れれば良い。フリをするというのが重要なポイントである。なぜなら、相手の心中を察する共感力は、人によっては、最も難しい能力だからである。

いつか誰にでも、謝らなくてはいけない状況は訪れる。不本意ながら、そうした状況が訪れてしまった時、相手の心中を察するフリをして、絶体絶命な状況を、シエラザード*1のように巧みに生き抜いて欲しい。

余談だが、仮にあなたが、相手の心中をパーフェクトに察する能力があれば、どのような状況でも生き残ることができるだろう。

 

*1:千夜一夜物語の語り手シエラザードもある意味、言い訳だけを考えて生き延びた人である。王様に殺されないための千夜一夜にわたる物語。物語を小出し続けて妃になった。物語という名の言い訳。話が佳境に入ると「続きはまた明日」。なんというじらしテク。あなたも言い訳だけを考えて妃になろう。

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