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アーキペラゴを探して

archipelago - 群島、島嶼、多島海、そのニュース。 脱領域への考察と情報

本物よりも花らしい造花の真実 / 僕が『ゴーン・ガール』を見た理由

雑文2

『ゴーン・ガール』のエンディングが流れても誰も席から動けなかった。感動したというよりも、見づかれてぐったりしてしまったのだ。なかには始終クスクスと笑い続けていた宇宙人のような女子もいたが……。来年の流行語は宇宙人女子とか猛者の女といったところか。

5回目の結婚記念日に妻が失踪する話。妻は幼少期にパーフェクトエイミーと呼び親しまれた絵本のモデル。やがて嫌疑が夫にかかるーー。ネタバレを限りなくなく抑えた酒を飲みながらの感想。

 

なんでこの映画を見ちゃったんだろ?見終わった瞬間、脳内をよぎる数億千万の想念のなかにそんなつぶやきもあったかもしれない。その問いに答えるならば『インターステラ』を見た時にこの映画の予告編を見たからだ。サスペンスは好きな分野でもある。

 


映画『ゴーン・ガール』予告編 - YouTube


エルビス・コステロの『SHE』が流れるこのトレーラー。どうみても見たくなるでしょうコレハ! 本編で『SHE』かかってたっけ?

 

もっと言えば、この作品の監督はなんと、デヴィッド・フィンチャーなんである。デヴィッド・フィンチャー監督と言えば、僕がしばしば見返す『セブン』と『ソディアック』の監督である。『ソディアック』は僕が最も好きな映画作品のひとつ。以前その理解されがたい魅力にニアミスするエントリーを書いたぐらいだ。

物足りなさの美学 / いつもの香港 - アーキペラゴを探して

 

ネタバレしない方針なので、ポイントについて書くしかないのだが、ひとつひとつ見所を見ていこう。

 

 ひとつ目の見所がベン・アフレックの筋肉。『アルマゲドン』で痩せっぽちだったベン・アフレックはもういない。違う映画の役づくりのためなのかなんなのか良くわからないが上半身の筋肉がもりもりしている。つくった感のある胸筋。調べてみるとバットマン役を演じるそうだ。この筋肉がライターという設定を嘘くさくさせる。そのバットマンのための筋肉もナマではあまり見せてくれないので筋肉女子は残念に思ったことだろう。かつて西島秀俊の鍛えあげられた肉体美がおしげもなく披露されたことで大河ドラマの視聴率が跳ね上がった。この事実をハリウッドはもっと重くみるべきである。ようするにベン・アフレックの胸筋がもりもりついたということが服の上からでも感じられる映画と言ったところだろうか。筋肉好きにオススメの映画。

 

次の見所がサイコパス。全米が大好きなサイコ野郎をテーマにしている。これはトレーラーで分かるのでネタバレではないだろう。しかし、サイコパスのレベルとしては疑問符がつく。それも最後に思わせぶりなシーンがあり、その挿入意図がはっきりとしないので判断はできないと思った。このサイコパスがいかれ気味のカップルにいとも簡単にお金を取られてしまうエピソードがある。サイコパスぶりを期待して見ていたので、なにやってんのと心の底からつぶやいてしまった。レクター博士のように本当に能力の高いサイコパスであれば敵対する気配を感じただけで瞬時に罠に嵌めこみ返り討ちにするであろう。監督は『セブン』の犯人のような理解不能のサイコパスを描きたいわけではなさそうだ。

  

すっきりしたとか泣いたとか感動したとか映画の効果を期待して人は映画を見ると思うが、この映画の効果は何だろうか。帰りのエレベーターの中で30代ぐらいのカップルが「この映画の尺どう思う?」「あの尺はちょっとね」「もうちょっと尺があった方が」「ウフフ」みたいなことで、この後の意志を互いに気持ち悪く通じ合わせている。このカップルはどの映画でもこうした会話を人に聞こえるように満員のエレベーターのなかで繰返しているのだろう。ふたりだけの確信犯的なプレイ。あの二人にはどんな映画でも効果があると見た! 世の中にはいろんな人がいるものだ。

分かる人にしか分からないレベルで下品に脱線してしまった。無理クリ収集つけるため、この映画で学べることを考えてみよう。以降ネタバレあり。

 

最後のシーンの意図がもうひとつ分からないと言った。これはどちらかがどちらかに殺させるように仕向けるようなことをほのめかしたエンディングと僕は解釈している。これも見た人によって解釈は違うだろう。どちらがどちらをヤルんだという解釈も違うだろう。どちらかが仕掛けた時にストーリーとしては完結する。それまでは、表面上の夫婦中はうまくいっているように演技しましょうよ。わたしはパーフェクトエイミー。

『診断名サイコパス』の冒頭の一節を引用する。けっこう好きな一節。この造花の話がこの映画のエッセンスかなと思う。これからの時代、収集がつかないのならば、あえて造花のように生きることも場合によっては必要かもしれないと思った。 

 まともな人たちはサイコパスを、心のなかと同じように外見も怪物的だと思いがちだが、事実はまったくそれに反している……通常、現実のモンスターたちは、ほんとうにノーマルな彼らの兄弟や姉妹以上にノーマルに見えるし、実際そのようにふるまう。(中略) ちょうど、蠟(ろう)でつくったバラのつぼみやプラスティックでできた桃のほうが、実物は不完全な形であったのに、私たちの目にはより完璧に見え、バラのつぼみや桃はこういうふうでなければならないと私たちが思いこんでしまうように。ウイリアム・マーチ『悪い種子』

  

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)

 

 

 

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