アーキペラゴを探して

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好きな時代の雰囲気を生きる

タワレコでスティーヴィー・ニックスの新作を視聴してみた。ナカミチのヘッドホンからシンプルでストレートなアメリカンロックが聞こえてくる。30年前に聞いたような音楽だけど、新鮮な感じがする。いま聴きたいのはこういう雰囲気の音楽だ。

Stevie Nicks - 24 Karat Gold [Official Lyric Video] - YouTube

 

音楽というのは、時代の雰囲気を良くあらわしている。その時代に流行る音楽が好きであれば、その時代の雰囲気が好きなんだろう。その時代の音楽が嫌いならば、その時代の雰囲気が嫌いなんだろうと思う。

 

ジャズやパンクのミュージシャンは、その時代の雰囲気も音楽も嫌いだったので、自ら音楽をつくり、自分たちのまわりだけでも、好きな雰囲気に変えていった。その時代が嫌いだった人の中で、ジャズやパンクを聴いて、その時代の雰囲気が好きになった人もいるかもしれない。友だちが教えてくれたセックス・ピストルズによって時代の雰囲気が変わって見えた。

 

自ら音楽をつくれない場合は、自分が好きな音楽を聴くことで、その時代の雰囲気に浸ることができる。スティーヴィー・ニックスを聴き続けていると、脳が音楽にマインドコントロールされるのか、その時代を生きているように錯覚する。

 

二週間続けて聴いていると、いつのまにか着る服装も変わり、穴の空いた古着のジーンズと、洗いざらしのTシャツに色褪せたネルシャツを着るようになった。だからこの爆弾性大寒波でもヒートテックは着ていない。置き場所に困るほどヒートテックをたくさん持っているが、ヒートテックはロックではない。思いっきり風邪をひきそうだ。早めに医者に行こうと思う。

 

こうした音楽の効果は僕が思いついたというわけではなく誰でも知っていることなのだろう。ロックが風邪に負けるなと力をくれる。実に寒い。本当に風邪をひきそうだ。僕が見たアメリカンはいつでもどこでも真冬のソウルでも半ソデ半パンだった。


好きな時代の音楽を聴くことで、好きな時代の雰囲気が再現される。その時代の雰囲気が嫌いならば、自分が好きな時代の雰囲気を生きれば良いのではないかと思う。

時代とまでいかなくても、ある場面の雰囲気を音楽は変える。 

 

友だちの結婚式に出席した時のことだ。披露宴の余興で、あろうことか、新郎があいさつは苦手なので歌を歌いますと言った。いったい、こいつは何を言いだすんだと式場が一瞬ざわめいた。感極まって自分でも何か歌いたくなったのかと思った。

 

マイ・ウェイ――。

 

ご近所枠の同じテーブルのご婦人が「選曲はいいけど、ちょっとこの歌い方はどうなのかしらね」みたいなことをのたまった。僕はそうですねとあいづちをうった。あえてそれがシド・ヴィシャスが歌ったパンクバージョンであることは説明しなかった。「ちょっとこれ聞いてみてえや」とシンナーでボロボロになった歯をのぞかせて、随分むかしにシド・ヴィシャスを教えてくれたのは新郎だった。

 

新婦も友だちの何人かは嬉しそうに笑っている。新郎も新婦も10代はそれなりにとがっていた。トゲトゲのブレスレットやトゲトゲの髪型があたると痛かった。今ではダウニーがまだあったやろかとドンキで人目もはばからず心配するほどのどこに出しても恥ずかしくないマイルドヤンキー。結婚式にはきわめて普通のタキシードとウエディングドレス。

 

着ている服や雰囲気もまったく変わってしまったが、パンクは忘れていなかった。そのことを晴れがましい結婚式という理解と不理解の境界線上で友人たちに伝えたかったのだろう。限りなく微妙な頭の働きが彼らにはあった。

友人たちは大好きだったパンクのスピリットを堂々としかし秘密裏に華やかな雰囲気にまぎれこませることに成功した。

 

 

シド・シングス(紙ジャケット仕様)

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