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アーキペラゴを探して

archipelago - 群島、島嶼、多島海、そのニュース。 脱領域への考察と情報

至上の娘愛ここに極まる / 『インターステラー』

インターステラー』を見て、父娘の話はやはり鉄板だなと思った。娘を持つ父親をターゲットにした映画と言えるかも知れない。星間を超える至上の娘愛(むすめあい)を描いた作品。来年あたりに「親父の一番長い日」を主題歌にしたドラマがつくられるのではないかと思った。ネタバレを含みつつ、酒場で話すような感想。

ハルマゲドンでダイハードのおっさんが自爆スイッチを押す瞬間に、娘の幼少からの記憶が走馬灯のようにフラッシュバックする。このシーンのイメージを膨らませ、娘の恋愛という無駄な要素を省きつつ、父と娘の関係により純化した作品と言えるだろう。娘を持ったたお父さんの気持ちにハンパなく寄り沿う映画。

地球を救えるかどうかというハラハラのサブストーリーがあるものの、娘を持つ父親からすれば、それは取るに足らない、どうでもいい話かも知れない。地球が滅びるかどうかよりも、愛する娘との関係が修復されることの方が気になって仕方ないところだろう。

もしかしたら、もう地球の未来なんてどうなってもいいから、早く娘に会いに帰ってやれよと思っちゃったお父さんがいるのではないか。そんなのプランAに決まってんだろと。

ブラックホール突入前までは間違いなく、傑作と思って見ていた。ブラックホール突入以降の設定に多少おかしなところを感じた。しかし、娘に会えるのか約束は果たせるのかというところで寸止めされ続けるお父さんからしてみれば、いよ、待ってましたとばかりのシーンとなり、あばたもえくぼというやつである。映画館では、ポン、ポンとお父さんが膝を打つ音がこだましていたように思う。このあたりの設定のおかしさをぼかすために、娘愛の比重を増やした可能性もある。娘への愛が強すぎてファンタジーとなってしまった。作品にするためのロンダリングというか割り切りがプロフェッショナルだ。

娘愛に感情移入できない人たちは、地球の命運とか、迫力ある映像とか、タイトル通りの星間旅行を体験するといった見方になる。確かに見る価値はあった。上映時間が3時間と長いので、途中で寝るかなと思ったが結構短く感じた。2時間を越えたあたりで、残り時間で本当に話の収拾がつくのか、何度も時計を見ながら心配したくらいだ。効果音が不必要にばかでかいのも迫力あってよかった。 

まともな登場人物は、主人公の父親と子ども時代の娘とロボットだけではないかと思う。それ以外の登場人物は、娘への至上の愛を価値あるものに見せるためなのか、だらしなく、ぶさまに、かっこわるく描かれる。主人公があまりかっこよくなかったのも、お父さんの感情移入を誘うための仕掛けだろう。

この映画のポイントは、1. 至上の娘愛を描く  2. 登場人物をあまりかっこよくしない  3. 設定や映像は徹底的にかっこよくするというところではないかと思う。

以後本格的なネタバレになるが、ラストでお父さんは娘との再会を成就し、宇宙船をちょいと失敬して、新たな女のもとへ颯爽と旅だつ。娘愛を貫いたお父さんへの男のロマンというご褒美だ。これでダメ押し。しかも、娘の口から、遺言のように、女が遠い星でひとり待ってるよと言わせるぬかりのなさ。120歳でも肉体はまだまだ若い父親の溜まりに溜まったリビドーを直撃するひと言。盗んだ宇宙船で脇目も振らずひとり待つ女のもとへ爽快に発射するラスト。SFにはじまりファンタジーを経て冒険活劇に終わるお得な内容。娘を持つ父親は1200%この作品を支持するだろう。

個人的には、C3とR2とモノリスを足して三で割ったようなロボットが最後に回収されて満足感があった。あなたの好みは分かってますよ、ちゃんとオマージュしてますよということで、スターウォーズファンとキューブリックファンのツボを抑えにかかったというところだろう。

同じタイムパラドックス的な作品ならば『トムは真夜中の庭で』をおすすめしたい。これは傑作だろうと、インターステラーに感動したお父さんに言っても、それは納得しないだろう。娘愛が描かれてないよ。何よりオレが描かれていないではないか。この映画で、娘愛ものは鉄板として確立された。この映画は、見通しのきかない世の中に、娘愛に生きるという人間的なビジョンを与えた。娘からお父さんに女をあきらめるなという応援メッセージつきで。

とにかく、この映画をつくったクリストファー・ノーラン監督は映画と人間を知りつくしているんだろうと思った。小説版もあるようなので、この映画に感動したお父さんは、細かな心理描写までしっかり確認しておきたいところだ。

 

インターステラー (竹書房文庫)

インターステラー (竹書房文庫)

 

 

 

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